空しか、見えない
「もしもし、なんですか?」

 社会人になると、こんな時間に電話をかけてくる友達はまずいない。深夜ならせいぜい携帯電話にメールが来るくらい。それにしたってこの時間はないし、今現在の佐千子には、常識を逸脱してまで情熱的に関わり合うような男も女もいない。
 宅急便伝票の不具合とか、エディを忘れていったとかそんな電話に違いないと佐千子は思った。それにしたって家まで電話されるなんて迷惑だって言ってやるべきかと声の調子を少し荒げた。
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