空しか、見えない
「この写真、私持ってない」

「向こうでプリントしたんだ。カメラに収めたままだった。このドライブの頃から、俺らはほとんど会ってないから。でも、俺はこの写真ずっと持ってたよ。サチがほら、いかにも頑固そうな顔で写ってて、いいんだよな」

「もう、ぼろぼろじゃない、そんな写真」

 そう言うと、佐千子はふと視線を感じ、その方を見やった。カウンターの向こうで、まゆみがグラスを磨く手を休め、微笑んでいた。
 カットされたグラスから、光が反射していた。
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