空しか、見えない
「明日また来るよ。下着なんかもいるでしょ? iPhoneは、そのとき持ってくるんでいいかな?」

「うん。どうせしばらくは使えそうもないしさ」

「ひとりじゃ、寂しいね? のぞむ。ちゃんと寝られる? 添い寝してあげようか?」

「大丈夫だよ」

「It’s joking.じゃあ、また明日ね」

 ルーは抱っこ紐に子どもをくくると、片目を瞑って、バイと手をあげる。

「悪いな、それに、まじ、ありがとう」

「アリガトゴザイマス」

 ルーは片言でそう真似て、病室を後にした。
 その足音を聞くうちに急激に眠気に包まれて、のぞむは目を瞑った。
 夢の続きを泳ぎたかった。一生懸命水を掻けば、今ならまだ仲間たちに追いつくんじゃないのか。置いて行かれたままじゃ嫌だから、もう一度泳がせてくれ。
 そう思ったのも束の間、のぞむはもう深い眠りについていた。


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