空しか、見えない
「俺、わかる? のぞむだけど」

 つい今しがたまで思い出していた相手からの電話だとは、すぐには信じがたかった。
 直接声を聞くのは軽く、3年ぶりくらいにはなる。佐千子は昔風に頬をつねってみた。

「のぞむ、いまどこにいるの?」

「急にごめんな。千夏に聞いたんだ、義朝のこと」

 掠れたような太い声は、変わっていない。佐千子の質問には答えずに、勝手に話し出すところも同じだ。
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