空しか、見えない
「明日からね、私たち」

「知ってる。岩井に行くんだろう?」

「そう、それでさっきまでアルバム見てたんだ。のぞむだってね、この写真ではまだスクール水着姿なんだから。だけどね、うちのお父さんたちの遠泳では、男子は、赤いふんどしだったって」

 愚にもつかないことをいきなり話している自分自身に、佐千子は呆れてしまう。電話を切られるのが嫌だったからだ。本当だったら、いろいろ訊きたい。どうしていたのか? どこで何をしていたのか? なぜあのとき、一方的に別れると決めたのか? 3年もの間、胸の内に抱えてきた憤りをぶつけたくなってくる。
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