空しか、見えない
 ふたりはやがて、久しぶりの水泳の感想を伝えてきた。だが佐千子には、何も聞かずとも、わかるような気がしていた。ふたりの背中に広がり始めた海を感じた。

「せっかくだから、ここで決めようか」

 佐千子は、千夏のメールに貼られたリンクの中から、隣駅のジムをひとつ選んだ。入会金も、会費もリーズナブルだし、何しろHPに写っているトレーナーは、なかなかイケメン揃いだった。

「がんばろうね、サチ」

 千夏は、佐千子の瞳の奥をどこか心配そうに覗き込んだ。
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