空しか、見えない
「純一は、今日、婚約者を連れてくるのかなと思ってたよ。そのお披露目なのかなって」

 フーちゃんが、少し遠慮がちにそう訊ねる。

「まあ、そのうち。でも、遠泳が終わるまでは無理かな」

「どうしたの? もしかしたら、まだ賛成してもらえてないとか?」
 
 マリカの問いかけにも、純一は笑みを浮かべたままだ。だからこそ哀しく見えた。

「一度そう思い込むと、頑固なところがあるみたいなんだ。僕も、意外だったけど」

 バーテンダーのまゆみは、穏やかな表情でみんなの話を聞いていた。
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