空しか、見えない
 そう考えていた矢先だった。
 プールサイドの入り口に現れたサセは、水着にも着替えていない。髪は後ろにまとめてあり、化粧も落としていない。ストライプのシャツに、白いパンツ姿だ。
 インストラクターに、このままプールサイドまで進んでいいか訊いているみたいだ。
 千夏は芙佐絵と顔を合わせると、水から上がった。帽子とゴーグルを外して、両手で髪をかきあげ、水を切る。
 芙佐絵は、ぶるぶるっと頭を振った。大きな胸も揺れた。飛沫がサセにかかったので千夏は笑ったが、かけられた当の本人は硬い表情をしたままだ。

「あのね、ふたりとも、このまま、出かけられるかな。まゆみさんの店に行きたいの」

「どうしたの? サセは泳がないの」

 芙佐絵が、首を傾げる。
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