空しか、見えない

 まゆみのバーでは、すでに純一と環がカウンターに並んで座っていた。どちらの前にもバーボンウィスキーがストレートで注がれたグラスが置かれ、しかしその横顔には、笑みも浮かんでいなかった。
 芙佐絵と千夏は、まだ乾ききらない髪のまま、佐千子に強引に引っ張られるように連れて来られた。

「ねえ、一体どうしたってわけなの?」

 千夏は環の隣に座り、カウンターの内側にいるまゆみに目で挨拶する。

「ジントニックと、何か食べるものも。お腹が空いちゃって、フィッシュ&チップスなんか、もらっちゃおうかな。ねえ、フーちゃんは、どうする?」

 店の片隅に座り、芙佐絵が、電話で話している相手は、例の体育教師なのだろう。指でOKのマークを出すので、同じものを頼んだ。
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