空しか、見えない
 けれど、再訪した季節外れの海には人気がなく、のぞむと佐千子は、ふたりきりで海辺を手をつないで歩いた。あまり話さなかった。高台へ上がって海を見渡し、帰りに駅前で、そばを食べた。
 ただそれだけで、溢れるような思い出に包まれた。そして、未来へとつながる道を確認しているような気持ちになった時間だったのだが、佐千子の独りよがりだった。
 あんな風に突然に、一方的にのぞむにフラレなかったら、佐千子の就職活動だって、もしかしたらうまくいっていたのかもしれない。あれからずっと、自分らしさとか、年相応の自信だとかを、佐千子は見失ったままなのだ。
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