空しか、見えない
「お前ら、じゃあ、おしゃもじ忘れたろ?」

 環が片目をつぶる。

「へへーん」

 マリカは運転席の方へ体を寄せて、きれいに整えられた爪先で、自分のおしゃもじを掲げて見せた。
 純一も、首の後ろから手品のように、抜き出した。
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