空しか、見えない
 環はそう言ってから、少し間を置き、続けた。

「ごめん」

「過去形ですか?」

 佐千子の方は、軽くため息をつく。

「だけど、サセはそのまま新聞記者しているんだからさ」

 と、純一が、澄んだ目で佐千子を見つめた。

「そうだよ。今だって、きっと情報部員サセはがんばってるんだろう?」
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