かくれんぼ - 大人になりきれない大人たち -
正紀が私の顔をジーッと覗き込んでいる。
「な、何っ!?」
「さっきからずっと呼んでるのに」
「ごめん!! で、何?」
「昼間 掃除してたらソファの下にこれが落ちてた」
正紀が差し出したのは、あの預金通帳。
「通帳ほっぽっとくなんて、美来らしくねーな」
「…」
「言っとくけど中身は見てないから」
「分かってるよ」
正紀は昔からそういう事できる奴じゃなかったもん。
「それは私のじゃないんだ。父親がね…」
手をつけずに置いたままだった預金通帳。
私はこの間の出来事を正紀に話すことにした。
「へー、親父さんがねぇ。 有り難いじゃん!」