フィレンツェの恋人~L'amore vero~
人間は、簡単に死んだりしないものなのね。


いいえ、きっと違う。


簡単に死ぬ事は許されない生き物なんだわ、きっと。


……残酷だわ、人間という生き物って。


ぐずり、と鼻をすすった時、しつこく鳴っていたメロディがふつりと途絶えた。


「……あっ」


次の瞬間、私は膨大な孤独感に襲われた。


怖くなった。


街はこんなにも煌びやかな夜で、こんなにも人で賑わっているのに。


私は、ひとりなのだと、寂しくてたまらなくなった。


幸せなオーラを振りまきながら、体を寄せ合う恋人たちが街に流れて行く。


ライトアップされた大通りに、初雪が降り続けていた。


ふと、上空を見上げると、初雪の向こうに丸く太った満月があって白く輝いていた。


めずらしい。


「……クリスマスに……フルムーンだなんて……」


携帯電話をバッグに押し込んで、私は再び歩き出した。


今度は静かに、こっそりと涙を流しながら。


なぜだか、このままマンションに帰りたくなかった。


それは、ひとりだという事を思い知らされるような気がしたから。


まあ、一人暮らしを始めてかれこれ五年になるのだから、ひとりは当たり前の事なのだけれど。


ひとりが当たり前の事なのに、今更、こんな事を思った。
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