フィレンツェの恋人~L'amore vero~
マンションに帰ったら、今度こそ、私はひとりぼっちになるのだ、と。


けれど、冬、十二月。


やっぱり寒いし、店といえばどこもかしこも家族連れや恋人たちで満席。


コンビニですら、同じだった。


どこも、ひとりで入るには勇気が必要な事のように思えた。


素直にマンションへ帰るのが先決だ。


真っ暗で、温かみの無い静寂に包まれたマンションの方がマシだと思った。


踵を返す。


でも、大通りは見渡す限りの人波とイルミネーション。


もう、うんざり。


いつもは気味が悪くて避けていた近道兼裏道を利用する事にした。


実家を出て、職場近くに借りたマンション。


大通りから、徒歩十分の好条件の場所だ。


家電量販店脇の裏路地を利用すれば、五分で帰る事が出来る。


しかし、メリットには必ずやデメリットも付属されてあるものだ。


裏路地は、本当に薄気味の悪い道だ。


私はごくりと息を飲んだ。


初雪の夜。


ひっそりと静まり返り、薄い雪色に染まった、街の底。


真後ろの大通りとは、天国と地獄ほどかけ離れた空間のようだ。


明りひとつなく、じっとりと湿った狭い狭い路地。


生ゴミと、古いカビの匂い。
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