フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「今日の合コン、銀行員なんですよ」


苦手だ。


だけど、決して、嫌いではない。


平賀彰子はバカ正直だから、嫌いではない。


美月のように裏でこそこそしたりできる器量がない子だから。


「そう。今日は良い人と出逢えるといいわね」


かといって、美月ほど好きになれそうにもないのだけれど。


「ありがとうございます。あ、牧瀬さん、良いお年をー」


「ええ。じゃあ、また来年。良いお年を」


と私はドアノブを回した。


「お疲れ様でした」


そして、ロッカールームを後にした。


今夜も、この街に、夜が訪れようとしている。


会社を出て、マンションの前にさしかかった時、ふと、空を見上げた。


冷たく澄んだ夜空には、ぽつり、ぽつり、と無数の星が輝いていた。


冬の星座が、ひしめき合っている。


世界中の夜空ににばらまかれたパズルピースたちが、今、一枚ずつ、神様の手によって繋ぎ合わせられようとしていた。


「ただいま」


「お帰りなさい、東子さん。お腹すいたよ」


無限大に広がっているこの宇宙にたったひとつの運命の、ピースが。


カチリ。


「東子さん、何を作っているの?」


「ちくわに納豆をつめて、てんぷらにするのよ」


「ふうん……臭いっ! これ、腐っているよ! 捨てよう!」


「ちょっと! 何するの! やめなさい!」


「だってこの豆、臭いよ! それにねばねばしていて気持ちが悪い!」


「これは腐ってないの! 納豆は体にいいのよ、とっても!」


「ナットー! なんて臭い豆だ! ナットー! サエキに教えてやろう!」


「はあ……」


運命、なるものはミステリーだ。


神秘的で、不思議な事だらけだ。

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