フィレンツェの恋人~L'amore vero~
かみ合わないものはいつまで経っても、かみ合うことなどない。


繋がらない運命の糸は一生繋がることなく、誰からも気付かれず、ひっそりと消滅していく。


でも、そこが神秘なのだ。


良くも悪くも、運。


たったひとつの出来事が、ピストルの引き金を引く。


そして、その一発が命中でもしたらもう、後戻りなどできない。


あとはもう、ドミノ倒しのように一気に加速し、ひとコマひとコマが結末に向かって繋がって行く。


あるいは、雪山の雪崩だ。


たったコンマ1ミリの亀裂が引き金になって、あとはもう一気に全てを飲み込んで行く。


ひとたまりもない。


嘘も真実も、何もかも全てをがぶっと飲み込む。


そうなってしまえばどう足掻いたって、その流れに逆らってみたって、無駄な努力だ。


変えようとして、変えられるようなものでもない。


推理小説のように、絡まった糸を一本一本紐解いている時間はおそらく、ない。


「とにかく、臭い臭いと言ってばかりいないで、食べてみて。美味しいのよ、納豆」


「……」


「食べて」


「ロベルトは、ぼくが嫌な物は作らなかったし、食べなくてもいいと言うのに」


「私はロベルトのように甘くないわ」


「東子さんは恐ろしい女性だ。魔女だ!」


「……食べなさい」


これは、あくまでも私の場合だ。


おそらく、きっかけはクリスマス・イヴ。


そして、私は自らのこの手で、引き金を引いたのではないだろうか。


「……おいしい。何だ、これは!」


「だから、納豆よ」


「ナットー!」


もし、あの日、裏路地で人間を拾ったりしなければ、ドミノ倒しに巻き込まれることも、雪崩に飲み込まれることもなかったはずだ。


でも、こればかりはやはり、真実なのだ。


私は、ハルを、拾った。










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