フィレンツェの恋人~L'amore vero~
朝、起きたその瞬間のハルの第一声。
お腹がすいたよ。
だから、食パンをトーストして、レタスとラディシュとプチトマトのサラダを作り、ベーコンを焼いて、目玉焼きを作ろうとしたら、
「ぼくがやる」
と言い出してきかなくなってしまったのだ。
「どうせまた失敗するに決まっているわ」
私は冷蔵庫の中を確認してから閉めて、
「昨日買ったばかりだったのに、もう全部無くなったわ」
そのまま冷蔵庫にもたれかかり、腕を組んだ。
ハルの料理センスは完璧なゼロだった。
ただ、オリーブオイルをしいた熱々のフライパンに、卵を割り落とすだけなのに。
ハルは、それができない。
べっしゃり、と不快な音が出て、フライパンの上で黄身が割れる。
それでもハルは諦めない。
何度も何度も挑戦する。
9つの卵が犠牲になった。
「……また買わなくちゃ」
げんなりする私に脇目もくれず、キラキラ目を輝かせて、
「見ていて、東子さん」
ハルはシンクの角に卵をコンコン叩いて亀裂を入れる。
「ぼくは今、ひとつの試練をクリアしようとしている。奇跡を起こそうとしているんだ」
この台詞も、犠牲になった卵の数だけ聞いている気がする。
熱々のフライパンの上に、ハルが卵を構える。
「うまくいったら、サエキに報告するよ」
ぐっ、と亀裂に力を込めたハルに、
「そっとよ、そーっと落とすのよ」
私は早口で言いながら隣に寄り添った。
「そっとだね。そー」
ぱこっ、と切れのいい音がして、中身がぽと……とフライパンの上に落ちた。
「「……あっ!」」
私とハルの声が、まったく同じタイミングで重なった。
そして、同時にフライパンの中を覗き込む。
お腹がすいたよ。
だから、食パンをトーストして、レタスとラディシュとプチトマトのサラダを作り、ベーコンを焼いて、目玉焼きを作ろうとしたら、
「ぼくがやる」
と言い出してきかなくなってしまったのだ。
「どうせまた失敗するに決まっているわ」
私は冷蔵庫の中を確認してから閉めて、
「昨日買ったばかりだったのに、もう全部無くなったわ」
そのまま冷蔵庫にもたれかかり、腕を組んだ。
ハルの料理センスは完璧なゼロだった。
ただ、オリーブオイルをしいた熱々のフライパンに、卵を割り落とすだけなのに。
ハルは、それができない。
べっしゃり、と不快な音が出て、フライパンの上で黄身が割れる。
それでもハルは諦めない。
何度も何度も挑戦する。
9つの卵が犠牲になった。
「……また買わなくちゃ」
げんなりする私に脇目もくれず、キラキラ目を輝かせて、
「見ていて、東子さん」
ハルはシンクの角に卵をコンコン叩いて亀裂を入れる。
「ぼくは今、ひとつの試練をクリアしようとしている。奇跡を起こそうとしているんだ」
この台詞も、犠牲になった卵の数だけ聞いている気がする。
熱々のフライパンの上に、ハルが卵を構える。
「うまくいったら、サエキに報告するよ」
ぐっ、と亀裂に力を込めたハルに、
「そっとよ、そーっと落とすのよ」
私は早口で言いながら隣に寄り添った。
「そっとだね。そー」
ぱこっ、と切れのいい音がして、中身がぽと……とフライパンの上に落ちた。
「「……あっ!」」
私とハルの声が、まったく同じタイミングで重なった。
そして、同時にフライパンの中を覗き込む。