フィレンツェの恋人~L'amore vero~
え? 、と首を傾げると、桔平も「えっ」と一歩詰め寄って来た。
「行かなかったのかな……」
「誰が? 何の事?」
「あー、いや……実は」
と桔平がどこか都合悪そうに話し出した。
「28日の朝、電話もらって。東子の携帯の番号が知りたいって言われたんだけど。でも、勝手に教えるようなものでもないだろ。そうしたら、直接会いに行くって。だから、東子の勤務先教えたんだ」
「誰に?」
「鷹司煌」
ハッとした。
おそらく、あれだ。
私と華穂がランチに行った日。
そして同時に確信した。
平賀彰子が言っていた、ジェントルマン、を。
「会ってないのか?」
桔平に、「ええ」と頷いた。
「でも、同僚の子から聞いたわ。男の人が来たって。だけど、その時、ランチに出ていたから」
煌さんだったのね。
「でも、なぜ、私に?」
さあ、と桔平が首を傾げて考え込む仕草をした後、こんな事を言った。
「あ、でも。話したい事があるって言ってた気がするなあ。パリに帰る前に一度会って話したいって。28日の夜、日本を発つって言ってたから、今はもうパリにいるだろうけど」
「そうだったの。悪い事をしてしまったわね」
と言いながら、私はなぜかほっとしていた。
私の携帯のナンバーを安易に教えないでくれた桔平に、感謝した。
「けど、また1月に仕事の関係で日本に来るって言ってたから。また連絡来ると思うけど。どうする?」
連絡があったら番号教えた方がいいかどうか、桔平に聞かれて、私は即答した。
「教えないで……教えないで」
「分かった」
微妙な沈黙が、私と桔平を包み込む。
昔からの仲にはあり得ないような、重たさだった。
「東子さん!」
その声に振り向くと、境内へ続く長蛇の列の中から、ハルが睨むように私を見つめていた。
あの野蛮な目とはまた違う、きつい目。
「おっと。怖い目つきする子だなあ。来いってさ」
と、桔平が苦笑いする。
「本当。じゃあ、行くわね。この話はまた後で」
踵を返した私の手を捕まえて、
「待って、東子」
桔平が言った。
気を付けろよ、と。
とても心配そうな目で。
「行かなかったのかな……」
「誰が? 何の事?」
「あー、いや……実は」
と桔平がどこか都合悪そうに話し出した。
「28日の朝、電話もらって。東子の携帯の番号が知りたいって言われたんだけど。でも、勝手に教えるようなものでもないだろ。そうしたら、直接会いに行くって。だから、東子の勤務先教えたんだ」
「誰に?」
「鷹司煌」
ハッとした。
おそらく、あれだ。
私と華穂がランチに行った日。
そして同時に確信した。
平賀彰子が言っていた、ジェントルマン、を。
「会ってないのか?」
桔平に、「ええ」と頷いた。
「でも、同僚の子から聞いたわ。男の人が来たって。だけど、その時、ランチに出ていたから」
煌さんだったのね。
「でも、なぜ、私に?」
さあ、と桔平が首を傾げて考え込む仕草をした後、こんな事を言った。
「あ、でも。話したい事があるって言ってた気がするなあ。パリに帰る前に一度会って話したいって。28日の夜、日本を発つって言ってたから、今はもうパリにいるだろうけど」
「そうだったの。悪い事をしてしまったわね」
と言いながら、私はなぜかほっとしていた。
私の携帯のナンバーを安易に教えないでくれた桔平に、感謝した。
「けど、また1月に仕事の関係で日本に来るって言ってたから。また連絡来ると思うけど。どうする?」
連絡があったら番号教えた方がいいかどうか、桔平に聞かれて、私は即答した。
「教えないで……教えないで」
「分かった」
微妙な沈黙が、私と桔平を包み込む。
昔からの仲にはあり得ないような、重たさだった。
「東子さん!」
その声に振り向くと、境内へ続く長蛇の列の中から、ハルが睨むように私を見つめていた。
あの野蛮な目とはまた違う、きつい目。
「おっと。怖い目つきする子だなあ。来いってさ」
と、桔平が苦笑いする。
「本当。じゃあ、行くわね。この話はまた後で」
踵を返した私の手を捕まえて、
「待って、東子」
桔平が言った。
気を付けろよ、と。
とても心配そうな目で。