フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「だって、仕方ないじゃない。私、本当に分からないのよ」


人を愛するという事がどういう事なのか。


「愛されたことのない私がどうやって人を愛せるというの? 親に捨てられた私が、親になれるものですか!」


愛されないなら、生まれてこないほうがその子の幸せのためよ。


私のように捨てられてしまうより、ずっと幸せ。


泣きながら訴える私を、ハルは瞬きもせずに見つめていた。


きっと軽蔑しているのだと思った。


ハルが、私を軽蔑しているのだと。


「だってそうでしょう? 愛されないのに、幸せな子なんていないでしょう? 生まれて来たのに愛されないなんて、不幸なだけよ!」


もう、頭の中がぐちゃぐちゃだった。


ママに捨てられた日の事。


牧瀬の両親が私に求めるのは「実花子」ではなく「東子」という現実。


慎二と美月の裏切り。


自ら犯した、中絶。


後悔。


そして、それらをなぜハルという人物に泣きながら吐き出してしまっているのか。


分からなかった。


「だけど、だけど……私はっ」


後悔に潰されそうになりながら、私は膝から崩れ落ちた。


アルマーニの香りが近づいてくる。


ひた、と真っ白なスニーカーが私の前で止まった。


顔を上げると、ハルが私を見下ろしていた。


「あなたは、愚かな人だ。なんて弱い人間なんだろう」


綺麗な目で。


「祖母と同じだよ。なんて弱いひとなんだろう」


ハルは言い、私を抱きしめた。


「なんてバカな女性なんだ」


「ハル……私は」


「もういい。何も言わないで。ぼくのいう事を聞いて。もう何も言わないで」


私の全てを包み込むように、全身で。


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