フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「約束して下さいね」


「え?」


煌さんがそっと目を開いた。


「午後1時までに、送って下さい」


「分かりました。お約束します」


囁くように言ったあと、煌さんは再び目を閉じて微笑んだ。


その綺麗な横顔を見つめたあと、私は大人しく革のシートに沈んだ。


深く。


この車がどこへ向かっているのかは分からない。


でも、不思議と不安はなかった。


これっぽっちも。


煌さんには、いやらしさの欠片もないのだ。


彼の横顔は初夏の草原のように爽やかだった。


なんて、ダークな香りなのだろう。


ル・マル。


心を許したわけではないのに、その気品あふれるダークな横顔には心惹かれるものがあった。















5分後に到着した先は、高級中華飯店だった。


ぐるりと一周オフホワイト色の壁に、ディープなエメラルドグリーンの絨毯とシャンデリアの個室に通された。


「あまり時間がないんだ。すぐに運んでくれ。コースメニューの順番が前後してもかまわないから、一気に運んでくれないか」


煌さんが店員に告げると、本当にすぐに料理が運ばれてきた。


次から、次へと。


あたかも、用意されていたかのように。


4種類の前菜の盛り合わせ。


焼き小龍包。


北京ダック。


ふかひれスープ。


鮮魚のから揚げに琥珀色の甘酢あんかけ。


牛フィレ肉の炒めに季節のフルーツソース添え。

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