フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「ええ。元気です」
「そうですか」
にっこり微笑んで、煌さんは箸を置いた。
「彼にもお会いしたかったのですが、時間に都合をつける事ができなくてね。残念です」
テーブルを挟んだ向こう岸から仄かにル・マルが香ってくる。
「柏木さんに、よろしくお伝えくださ……」
ふあっ、と煌さんが大きなあくびをした。
充血した瞳が潤んでいた。
「失礼。時差ぼけです。どうもこればかりはいつまで経ってもなれなくてね」
日本とパリは8時間もの時差があるのだ、と煌さんが教えてくれた。
パリは日本よる8時間遅く時間が流れているのだそうだ。
煌さんはスーツの袖口から時計を見て、
「今、パリは朝の4時すぎです」
疲れたように何度か瞬きを繰り返した。
「大変ですね。煌さんはお忙しい方ですものね」
鷹司グループの社長、だもの。
忙しくないはずがないわ。
私は杏仁豆腐に手を伸ばし、でも、クコの実だけを食べてスプーンを置いた。
「今日もお仕事で日本に来られたの?」
「そうです。この後、日本の支店に顔を出して、20時発の便でパリへ戻ります」
「本当にお忙しい方」
言った私を見つめて、突然、煌さんが吹き出した。
「嘘です。仕事で来たわけではありません」
「えっ、嘘なの?」
「ええ」
「なら、遠路はるばる、わざわざ何をしにいらしたの?」
目の下に濃いクマをくっきり作ってまで。
怪訝な視線を向けると、煌さんはますます笑い出した。
「そんなふうに言われると、余計言いにくいですね」
困ったな、と煌さんは本当に困った顔をして肩をすくめた。
「お会いしたかったんです」
「え?」
「そうですか」
にっこり微笑んで、煌さんは箸を置いた。
「彼にもお会いしたかったのですが、時間に都合をつける事ができなくてね。残念です」
テーブルを挟んだ向こう岸から仄かにル・マルが香ってくる。
「柏木さんに、よろしくお伝えくださ……」
ふあっ、と煌さんが大きなあくびをした。
充血した瞳が潤んでいた。
「失礼。時差ぼけです。どうもこればかりはいつまで経ってもなれなくてね」
日本とパリは8時間もの時差があるのだ、と煌さんが教えてくれた。
パリは日本よる8時間遅く時間が流れているのだそうだ。
煌さんはスーツの袖口から時計を見て、
「今、パリは朝の4時すぎです」
疲れたように何度か瞬きを繰り返した。
「大変ですね。煌さんはお忙しい方ですものね」
鷹司グループの社長、だもの。
忙しくないはずがないわ。
私は杏仁豆腐に手を伸ばし、でも、クコの実だけを食べてスプーンを置いた。
「今日もお仕事で日本に来られたの?」
「そうです。この後、日本の支店に顔を出して、20時発の便でパリへ戻ります」
「本当にお忙しい方」
言った私を見つめて、突然、煌さんが吹き出した。
「嘘です。仕事で来たわけではありません」
「えっ、嘘なの?」
「ええ」
「なら、遠路はるばる、わざわざ何をしにいらしたの?」
目の下に濃いクマをくっきり作ってまで。
怪訝な視線を向けると、煌さんはますます笑い出した。
「そんなふうに言われると、余計言いにくいですね」
困ったな、と煌さんは本当に困った顔をして肩をすくめた。
「お会いしたかったんです」
「え?」