フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「同じ空間で生活を共にしていれば、いずれ知るのは当然の流れではないでしょうか」
そう言って、煌さんは笑った。
品良く、とても雅やかに。
「そういう意味ですよ」
もっとしつこく突っ込むことならできたはずだった。
けれど、なぜか、それ以上突っ込む事が出来なかった。
私は黙って煌さんのあとを追うように、飯店をあとにした。
車内で、私たちは言葉を交わさなかった。
一言も。
まるで、お互いに相手の様子を探るように黙り込んだ。
目も合わせなかった。
車が職場の近くに停まってから、ようやく口をきいた。
先に口を開いたのは煌さんだった。
「突然、押し掛けて連れ出したりして申し訳なかった」
「いいえ。こちらこそ、ごちそうさまでした」
「いえ」
じゃあ、と車を降りようとドアを開けようとしていると、肩を叩かれた。
「そちらは車道なので危険ですから、こちらから降りて下さい」
車の横を通り過ぎる社員たちがじろじろと中を覗き見ては振り返り、ひそひそと話す姿がスモークがかったウインドウ越しに見える。
「足元、気を付けて下さい」
ドアを開けて降りようとする煌さんのスーツの裾を引っ張った。
「あの、煌さん」
「どうしました?」
「あの……もう、ここへは来ないでください」
私が言うと、煌さんは目をくるんと丸くした。
「なぜですか?」
私は露骨に目を反らした。
キラ、と輝くGucciのタイピンを見つめながら答えた。
そう言って、煌さんは笑った。
品良く、とても雅やかに。
「そういう意味ですよ」
もっとしつこく突っ込むことならできたはずだった。
けれど、なぜか、それ以上突っ込む事が出来なかった。
私は黙って煌さんのあとを追うように、飯店をあとにした。
車内で、私たちは言葉を交わさなかった。
一言も。
まるで、お互いに相手の様子を探るように黙り込んだ。
目も合わせなかった。
車が職場の近くに停まってから、ようやく口をきいた。
先に口を開いたのは煌さんだった。
「突然、押し掛けて連れ出したりして申し訳なかった」
「いいえ。こちらこそ、ごちそうさまでした」
「いえ」
じゃあ、と車を降りようとドアを開けようとしていると、肩を叩かれた。
「そちらは車道なので危険ですから、こちらから降りて下さい」
車の横を通り過ぎる社員たちがじろじろと中を覗き見ては振り返り、ひそひそと話す姿がスモークがかったウインドウ越しに見える。
「足元、気を付けて下さい」
ドアを開けて降りようとする煌さんのスーツの裾を引っ張った。
「あの、煌さん」
「どうしました?」
「あの……もう、ここへは来ないでください」
私が言うと、煌さんは目をくるんと丸くした。
「なぜですか?」
私は露骨に目を反らした。
キラ、と輝くGucciのタイピンを見つめながら答えた。