フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「ソーシャルレンディングといって」


「ソーシャル?」


「簡単に言いますと、個人間での融資、です」


「でも、それだと、危険ではないですか? 詐欺、とか」


「そうです。ですから、僕たちがサイトを立ち上げて、融資する側としてもらいたい側の仲介役をするのですよ」


銀行や消費者金融が主流の日本ではマイナーだが、アメリカやイギリスを始めとしたヨーロッパではもうメジャーな事業のひとつなのだそうだ。


「……難しそうですね」


「そうでもないですよ。まあ、融資のオークションと考えていただければ」


「ますます、分かりません」


やっぱり、煌さんは別世界の人間だ。


「とにかく、困りましたね」


と煌さんが苦笑いした。


「また食事に誘いたいと思っていたのですが」


「お気持ちだけ、いただいておきます。有り難うございます」


一拍置いて「分かりました」と言い、煌さんはドアを開け、車を降りた。


私も運転手にお礼を告げ、車を降りる。


「今日は、ご馳走様でした」


私が一礼すると、


「僕は東子さんと、もっと話をしてみたいのですが」


と煌さんは残念そうに言った。


そして、突然何かを思い出したのか「あ」と声を漏らして車に乗り込み、


「忘れるところでした。おみやげです」


とシートに座ったまますっと手だけを伸ばしてきた。


小さな、ショッキングピンク色の紙袋だった。


【FAUCHON】


と、黒のロゴが入っていた。


「ランチをごちそうになって、おみやげまでいただけなんて、できません」


一歩後退すると、煌さんはくすくす笑って車から降りて来た。


「薔薇はお好きですか?」


「え? はあ……」


「薔薇の花びら入りの、苺ジャムです。甘すぎなくお洒落だと、パリのマドモアゼルたちに人気があるらしい」


「そうですか」


「要らなければ捨てていただいてかまわない」


受け取って下さい、と煌さんは半ば強制的に紙袋を持たせた。
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