フィレンツェの恋人~L'amore vero~
ここでしつこく断るのも失礼かもしれないと思い、私は素直に受け取った。
「ありがとうございます」
背後を通過して行く人の視線が痛い。
「じゃあ、失礼します」
と踵を返した時、腕を掴まれた。
振り向くと煌さんは「ならば」とスーツの内ポケットから携帯電話を取り出した。
「教えていただけませんか。東子さんのナンバー」
私は即答した。
「嫌です」
煌さんも即答だった。
「そうですか」
「すみません」
「では、仕方ありませんね。またこちらへ伺うしかない。また来ます。食事に行きましょう」
そう言って、煌さんが車に乗り込もうとした彼の腕を掴んで、
「ちょっと待ってください」
と私は睨んだ。
「さっき、分かったと言ってくれたじゃないですか」
「ええ。言いました」
頷いた煌さんはしれっとしていた。
「僕は“目立つ”と言われた事に対して、分かったと言っただけです。来ないとは一言も言っていません」
開いた口がふさがらない。