フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「小嶺華穂です。草冠のハナに、稲穂のホで華穂です」
私も名前負け、と笑いながら彼の手を握り返す。
「華穂、でかまいません」
ああ、と彼も私の手を握り返して来た。
「では、僕も、煌で」
清潔な夏の陽射しを浴びて、清浄無垢な空気に包まれた古き良き教会の前で、私たちは微笑みを交わした。
私たちはセーヌ川沿いを歩きながら、話す事にした。
「煌は、いつからフランスで生活しているの? 生まれた時からずっと?」
「確かに、僕は日本生まれだよ」
互いに日本で生まれた事に加え、歳が近かったという事もあって、私たちが打ち解けるのにそう時間は要さなかった。
「日本生まれだけど、10歳からはパリで育ったからね。生粋のフランス人みたいなものさ」
「そうなの。煌のご両親は? 日本人?」
「そうだよ。どちらも日本人」
「そう。もうひとつ、聞いてもいい?」
「いくつでも」
煌は私に、いろんな事を教えてくれた。
「今日はこれから用事でもあるの?」
「ないよ。どうして?」
「だって、休日なのにめかし込んでいるんだもの。スーツなんて着て」
しかも、リクルートスーツとはわけが違う、いかにも高級そうなスリムなデザインスーツだ。
「煌は社会人?」
仕事があるのにわざわざ時間を作らせてしまったのではないかと詰め寄る私に、
「まさか」
と煌はあっけらかんと首を振って笑い飛ばした。
「華穂と同じだよ。僕は学生。そんなに老けて見えるの?」
「そうだったの? やだ、ごめんなさい。スーツなんて着ているからてっきり」
ああ、これは、と煌がスーツに触れる。
「さっき、父に呼ばれてね。父の親しい知人に挨拶に出向いて来たから」
「そうなの。煌のお父様はどんなお仕事を?」
「……父の仕事に興味があるの? 話せば長くなるけど、それでも聞くかい?」
ええ、と頷くと、辺りを見渡したあと、
「じゃあ、あそこ。あそこに座って話そうか」
と街路樹の真下にあったベンチを指さして煌が促してきた。
私も名前負け、と笑いながら彼の手を握り返す。
「華穂、でかまいません」
ああ、と彼も私の手を握り返して来た。
「では、僕も、煌で」
清潔な夏の陽射しを浴びて、清浄無垢な空気に包まれた古き良き教会の前で、私たちは微笑みを交わした。
私たちはセーヌ川沿いを歩きながら、話す事にした。
「煌は、いつからフランスで生活しているの? 生まれた時からずっと?」
「確かに、僕は日本生まれだよ」
互いに日本で生まれた事に加え、歳が近かったという事もあって、私たちが打ち解けるのにそう時間は要さなかった。
「日本生まれだけど、10歳からはパリで育ったからね。生粋のフランス人みたいなものさ」
「そうなの。煌のご両親は? 日本人?」
「そうだよ。どちらも日本人」
「そう。もうひとつ、聞いてもいい?」
「いくつでも」
煌は私に、いろんな事を教えてくれた。
「今日はこれから用事でもあるの?」
「ないよ。どうして?」
「だって、休日なのにめかし込んでいるんだもの。スーツなんて着て」
しかも、リクルートスーツとはわけが違う、いかにも高級そうなスリムなデザインスーツだ。
「煌は社会人?」
仕事があるのにわざわざ時間を作らせてしまったのではないかと詰め寄る私に、
「まさか」
と煌はあっけらかんと首を振って笑い飛ばした。
「華穂と同じだよ。僕は学生。そんなに老けて見えるの?」
「そうだったの? やだ、ごめんなさい。スーツなんて着ているからてっきり」
ああ、これは、と煌がスーツに触れる。
「さっき、父に呼ばれてね。父の親しい知人に挨拶に出向いて来たから」
「そうなの。煌のお父様はどんなお仕事を?」
「……父の仕事に興味があるの? 話せば長くなるけど、それでも聞くかい?」
ええ、と頷くと、辺りを見渡したあと、
「じゃあ、あそこ。あそこに座って話そうか」
と街路樹の真下にあったベンチを指さして煌が促してきた。