フィレンツェの恋人~L'amore vero~
うっとりしながら教会内を見渡していると、何の前触れも無く唐突に、大きな鐘の音が地響きのように鳴り渡った。
「ひえっ」
突然鳴り響いた巨大な音に驚いて耳を塞ぎながら身を委縮させると、
「驚いた? 大丈夫。死にはしないさ。たいてい、この時間に鳴るんだ」
と煌が大きな口で笑った。
「ひどい! 鳴る時間を知っていて、わざと教えてくれなかったのね?」
「教えようと思っていたら、鳴ってしまったんだよ」
「嘘! ひどいわ」
「僕は悪戯が趣味なんだ」
鐘の余韻が残る中、煌が教えてくれた。
「この教会の鐘は、歴史的いわくつきなんだ」
「いわくつき?」
「そう。知らない? 大虐殺事件」
「ぎゃくっ、さつう?」
16世紀後半。
新旧宗教対立が激しくなった、1572年、8月24日。
「まさに、今日だね。1572年の、今日だ。8月24日」
この教会の鐘の音を合図にプロテスタント心奉者の大虐殺が始まった日とされているんだよ。
と、煌はワインレッド色に輝くステンドグラスを見つめながら、話し続けた。
「Saint-Barthe'lemy. 聖バルデミーの虐殺」
パリで3~4万人。
フランス全土で10数万人が命を奪われたという。
「フランス史上最大の、大虐殺事件だよ」
本当に、そんな惨劇があって。
本当に、そんな事に、この厳粛な雰囲気に包まれた教会の鐘が使われたのだろうか。
「……なんだか、怖いわね。背中、ぞっとしちゃった」
私が顔を引きつらせると、煌は「もう遠い遠い昔の話さ」と穏やかに微笑む。
「でも、信じられないわ」
教会の一番奥には3つのステンドグラス。
主祭壇の真上には、更に細やかなワインレッドとブルーのステンドグラス。
こんなにも美しいのに。
そんな惨劇に利用された教会だったなんて……。
「あ」
ふと、顔を上げた時、壁に時計があるのを見つけて、
「ねえ、煌。あれ」
と時計の下に彫刻されているゴールドの文字を指さしながら聞いた。
「ひえっ」
突然鳴り響いた巨大な音に驚いて耳を塞ぎながら身を委縮させると、
「驚いた? 大丈夫。死にはしないさ。たいてい、この時間に鳴るんだ」
と煌が大きな口で笑った。
「ひどい! 鳴る時間を知っていて、わざと教えてくれなかったのね?」
「教えようと思っていたら、鳴ってしまったんだよ」
「嘘! ひどいわ」
「僕は悪戯が趣味なんだ」
鐘の余韻が残る中、煌が教えてくれた。
「この教会の鐘は、歴史的いわくつきなんだ」
「いわくつき?」
「そう。知らない? 大虐殺事件」
「ぎゃくっ、さつう?」
16世紀後半。
新旧宗教対立が激しくなった、1572年、8月24日。
「まさに、今日だね。1572年の、今日だ。8月24日」
この教会の鐘の音を合図にプロテスタント心奉者の大虐殺が始まった日とされているんだよ。
と、煌はワインレッド色に輝くステンドグラスを見つめながら、話し続けた。
「Saint-Barthe'lemy. 聖バルデミーの虐殺」
パリで3~4万人。
フランス全土で10数万人が命を奪われたという。
「フランス史上最大の、大虐殺事件だよ」
本当に、そんな惨劇があって。
本当に、そんな事に、この厳粛な雰囲気に包まれた教会の鐘が使われたのだろうか。
「……なんだか、怖いわね。背中、ぞっとしちゃった」
私が顔を引きつらせると、煌は「もう遠い遠い昔の話さ」と穏やかに微笑む。
「でも、信じられないわ」
教会の一番奥には3つのステンドグラス。
主祭壇の真上には、更に細やかなワインレッドとブルーのステンドグラス。
こんなにも美しいのに。
そんな惨劇に利用された教会だったなんて……。
「あ」
ふと、顔を上げた時、壁に時計があるのを見つけて、
「ねえ、煌。あれ」
と時計の下に彫刻されているゴールドの文字を指さしながら聞いた。