フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「ただ、普通でありたいだけなんだ」
窒息してしまいそうなほど、胸が詰まった。
「……それが今の僕の、唯一の希望であり、そして……夢なんだ」
温情をかけるつもりもない。
「だから僕は必死に勉強しているだけなんだ。たぶん、そうだと思うんだ」
ただ、私は、今日初めて出逢ったばかりのこの人を。
鷹司煌、という人間を尊く思った。
この人は硝子細工のように繊細に造られているのではないか、と。
心配になってしまった。
愛おしさにとても良く似た感情で喉がつっかえて言葉が出て来ない、というより。
かける言葉が見当たらなかった。
泡沫のような過去を背負いながら、無防備に笑っている彼が、
「私は、あなたが眩しくてたまらないわ、煌」
私には煌めいて見えた。
20歳になったばかりの煌が胸に抱き締めていた夢は、大きなものであり、細やかなものに見えた。
けれども。
この果てしなく広い世界でいちばん。
心暖かく、たわやかな夢だと思えて仕方なかった。
教会に、鐘の音が鳴り渡る。
「お昼か。お腹が減ったね。僕のつまらない夢を聞いてくれたお礼をさせてくれないか」
「つまらないなんて、そんな」
「いいから。決して高級とは言えないけど、美味しいんだ。行こう、ここからすぐなんだ」
それから、教会をあとにして本当にすぐのブーランジェリーカフェに入った。
「もうかなり前なんだけど、一度、パスカルと来た事があるんだ」
パリは人が住む所ならどこにでも必ずパン屋やカフェがあったりする。
たいていの人が家を出て5分以内に焼立てのバケットを手に入れられる街。
「でもね、僕はここのが一番だと思うんだ。ここの、シリアルバケットのサンドが最高」
「すごく楽しみ」
小さいけれど、小洒落た店内。
焼立てのバケットのこうばしい香りと、淹れたてのコーヒーの苦い香りが狭い空間を漂う、お洒落だけれど素朴で小さなカフェだった。
パリにはざっと1万件ほどのカフェがあって、探さなくても街を歩けばカフェにぶつかる。
「せっかくだから、空の下で食べよう」
と煌が言ったので、そうする事にした。
窒息してしまいそうなほど、胸が詰まった。
「……それが今の僕の、唯一の希望であり、そして……夢なんだ」
温情をかけるつもりもない。
「だから僕は必死に勉強しているだけなんだ。たぶん、そうだと思うんだ」
ただ、私は、今日初めて出逢ったばかりのこの人を。
鷹司煌、という人間を尊く思った。
この人は硝子細工のように繊細に造られているのではないか、と。
心配になってしまった。
愛おしさにとても良く似た感情で喉がつっかえて言葉が出て来ない、というより。
かける言葉が見当たらなかった。
泡沫のような過去を背負いながら、無防備に笑っている彼が、
「私は、あなたが眩しくてたまらないわ、煌」
私には煌めいて見えた。
20歳になったばかりの煌が胸に抱き締めていた夢は、大きなものであり、細やかなものに見えた。
けれども。
この果てしなく広い世界でいちばん。
心暖かく、たわやかな夢だと思えて仕方なかった。
教会に、鐘の音が鳴り渡る。
「お昼か。お腹が減ったね。僕のつまらない夢を聞いてくれたお礼をさせてくれないか」
「つまらないなんて、そんな」
「いいから。決して高級とは言えないけど、美味しいんだ。行こう、ここからすぐなんだ」
それから、教会をあとにして本当にすぐのブーランジェリーカフェに入った。
「もうかなり前なんだけど、一度、パスカルと来た事があるんだ」
パリは人が住む所ならどこにでも必ずパン屋やカフェがあったりする。
たいていの人が家を出て5分以内に焼立てのバケットを手に入れられる街。
「でもね、僕はここのが一番だと思うんだ。ここの、シリアルバケットのサンドが最高」
「すごく楽しみ」
小さいけれど、小洒落た店内。
焼立てのバケットのこうばしい香りと、淹れたてのコーヒーの苦い香りが狭い空間を漂う、お洒落だけれど素朴で小さなカフェだった。
パリにはざっと1万件ほどのカフェがあって、探さなくても街を歩けばカフェにぶつかる。
「せっかくだから、空の下で食べよう」
と煌が言ったので、そうする事にした。