フィレンツェの恋人~L'amore vero~
公園を飛び出して、セーヌ川沿いに軒を連ねる雑貨店の軒下をめがけて飛び込む。
「今日は雨が降る予報じゃなかったのに」
ツイてないな、と煌はスーツについた雨粒を払い落し始めた。
「濡れなかった? 大丈夫? 華穂」
頭からバケツの水をかぶったように濡れてしまった煌が、濡れていない私を気遣うように聞いてきた。
「ええ、私は平気……でも、煌が」
私は急いでバッグからハンカチを取り出して、
「ごめんなさい。私をかばったせいで」
煌の顔を拭いた。
「ありがとう。すまない」
通りのガス灯に蝋燭のような温かみのある光が灯り始める。
傘を差した買い物客たちが足早に通りを行き交っていった。
「雨、やみそうにないわね」
軒下から雨空を見上げた私に、煌は「じきにやむよ」と笑った。
「ほら。向こうの空が明るいだろう。夏の通り雨だよ」
「だと、いいけど」
上の空声で返しながら何気なしにガラス張りの店内を覗き込む。
細身で白髪の可愛らしい老女がレジカウンターでこくりこくり、居眠りをしていた。
中はお洒落で、だけどキッチュな小物雑貨たちがひしめき合うように、所せましとディスプレイされている。
「わ……」
アンティークの小物や、ファンシーなカフェオレボウル。
だけど、店内の雰囲気はノスタルジックで。
「素敵」
背後に雨の気配を感じながら、ガラスにべったりとはり付いた私を、
「grenouille (カエルみたいだ)」
と煌はけらけらと笑い飛ばした。
「ひどい」
「ああ、すまない。ごめん」
「……でも、本当に」
なんて可愛らしくて、繊細で、温かみのある素敵なお店なの。
世界中の宝物を詰め込んだ小箱のような雑貨店だった。
レトロなデザインのティーセットやコーヒーカップに食器。
クリスタルのワイングラスやアクセサリー。
エッフェル塔や蝶々や花をモチーフにした、ポストカードまである。
店内の中央部には優しい明りを放つランプがつるされていて、蛍のようにぼんやりとした光が降り注ぐガラスのショーケースがあった。
「今日は雨が降る予報じゃなかったのに」
ツイてないな、と煌はスーツについた雨粒を払い落し始めた。
「濡れなかった? 大丈夫? 華穂」
頭からバケツの水をかぶったように濡れてしまった煌が、濡れていない私を気遣うように聞いてきた。
「ええ、私は平気……でも、煌が」
私は急いでバッグからハンカチを取り出して、
「ごめんなさい。私をかばったせいで」
煌の顔を拭いた。
「ありがとう。すまない」
通りのガス灯に蝋燭のような温かみのある光が灯り始める。
傘を差した買い物客たちが足早に通りを行き交っていった。
「雨、やみそうにないわね」
軒下から雨空を見上げた私に、煌は「じきにやむよ」と笑った。
「ほら。向こうの空が明るいだろう。夏の通り雨だよ」
「だと、いいけど」
上の空声で返しながら何気なしにガラス張りの店内を覗き込む。
細身で白髪の可愛らしい老女がレジカウンターでこくりこくり、居眠りをしていた。
中はお洒落で、だけどキッチュな小物雑貨たちがひしめき合うように、所せましとディスプレイされている。
「わ……」
アンティークの小物や、ファンシーなカフェオレボウル。
だけど、店内の雰囲気はノスタルジックで。
「素敵」
背後に雨の気配を感じながら、ガラスにべったりとはり付いた私を、
「grenouille (カエルみたいだ)」
と煌はけらけらと笑い飛ばした。
「ひどい」
「ああ、すまない。ごめん」
「……でも、本当に」
なんて可愛らしくて、繊細で、温かみのある素敵なお店なの。
世界中の宝物を詰め込んだ小箱のような雑貨店だった。
レトロなデザインのティーセットやコーヒーカップに食器。
クリスタルのワイングラスやアクセサリー。
エッフェル塔や蝶々や花をモチーフにした、ポストカードまである。
店内の中央部には優しい明りを放つランプがつるされていて、蛍のようにぼんやりとした光が降り注ぐガラスのショーケースがあった。