フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「綺麗ねー」


細工が美しいヘアアクセサリーや指輪にピアス。


エレガントなペンダントや華奢なデザインのネックレスにブレスレット。


「素敵ね……どれも、全部」


左岸にもセレクトショップや雑貨店はたくさんあるけれど、右岸ならではの高級感あふれるデザインや店内の雰囲気にうっとりしてしまう。


なんて可愛らしくて、優美でノスタルジーな雑貨たちなのかしら。


「……あ」


その中でもひときわ引きつけられた物があった。


「煌、ねえ、煌」


「え?」


「見て、あれ」


それをじっと見つめながら指さす。


「何て綺麗なのかしら」


「どれ?」


「ほら、あのショーケースの中の。真っ白な羽根の上に飾られている、カラフルな」


バレッタ。


つやつやとした大理石のような高級感のある光沢を放つバレッタが、なぜか私を惹きつけてやまなかった。


ディープレッド、レモンイエロー、バイオレット、ショッキングピンク、ロイヤルブルー。


鮮やかなヴィヴィットカラーからパステルカラー、それに、柄物まで様々なデザインの物が並んでいる。


あのバレッタを身に着ける女性はきっと、私とは正反対の女性だと思う。


例えば、清楚で淑やかで、ロングドレスなんかが妙に似合うような大人っぽい。


そんな女性。


ガラスに映り込む自分の姿を見て、こっそり苦笑いした。


ジーンズに白いTシャツにスニーカーで、なんて色気の欠片もないのだろう。


もう18歳だというのに、化粧っ気もない。


短いまつ毛にささっとマスカラをしただけの淡白な東洋人顔。


ずっと陸上部だったし、お洒落には無縁で、もともと好奇心旺盛な男みたいな性格だったから、せめて髪の毛くらいはと思って伸ばし続けて来たけれど。


その長い黒髪もおばけみたいにぼさぼさで、まったく似合っていない。


ブローくらいしてくれば良かった。


きっと、あのバレッタが似合うのはもっとこうつやつやの髪の毛で、ふわふわのパーマがかった栗色の、ロングヘアーで。


私のような、おばけのように長くて真っ黒な髪の毛には合わないに決まっている。


背伸びをしたって無理。
< 291 / 415 >

この作品をシェア

pagetop