フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「パスカルに叱られたよ。遅くなるなら連絡一本入れるのが筋だって」
「ごめんなさい。私も気付かなくて」
夜になっている事にさえ気付かないくらい、あっと言う間の一日だった。
それから、濡れたアスファルトがガス灯の光を吸収しながら小刻みに輝いている道を、私たちは無言で歩いた。
何を話せばいいのか、分からなかった。
「Kaho!」
アンリ4世の騎馬像前でジョゼットと合流した時、辺りはもう完全に夜になっていて、間もなく23時になろうとしていた。
「Josette!」
「Ah,Kaho!」
私の姿を見つけるや否や、何度も電話をしたのよ、とジョゼットが駆け寄って来た。
「Je m'etais inquiete pour toi,Kaho (心配していたのよ、華穂)tres……inquiete (とても、心配していたわ)」
と涙目で私を強く抱き締めたジョゼットに、私も両腕を回してしがみつく。
「Desolee,je n'ai rien vu (ごめんなさい、気付かなかったの)」
煌とのおしゃべりに夢中になりすぎて、電話に気付かなかったこと。
そして、気付いて掛け直そうとしたら電池が切れてしまったことも。
説明すると、ジョゼットはようやく表情を緩めて、安堵したように穏やかな口調に戻った。
「D'accord,J'ai compris (分かったわ、もういいから)」
こうして無事だったんだもの、とジョゼットが微笑む。
「Desolee,Josette(ごめんね、ジョゼット)」
どうして、ジョゼットはよそ者の私にここまで優しくしてくれるのだろう。
微笑むジョゼットの涙目は、赤く充血している。
もしかしたら、私は、両親にすらこうして心配してもらった事がなかったのかもしれない。
心配してくれる誰かが、いる。
それがこんなにも幸せな事なのだと、もう一度ジョゼットに抱き締められて思った。
そして、心配させてしまった事を、本当に本当に申し訳なく思った時、ジョゼットの震えた声が私の耳に掛かって、
「……えっ?」
顔を上げた。
また煌がやらかしたんじゃないかって、不安だったのよ、とジョゼットが言ったから。
「……Josetto」
背後で煌の声がして、私とジョゼットはようやく体を離した。
「ごめんなさい。私も気付かなくて」
夜になっている事にさえ気付かないくらい、あっと言う間の一日だった。
それから、濡れたアスファルトがガス灯の光を吸収しながら小刻みに輝いている道を、私たちは無言で歩いた。
何を話せばいいのか、分からなかった。
「Kaho!」
アンリ4世の騎馬像前でジョゼットと合流した時、辺りはもう完全に夜になっていて、間もなく23時になろうとしていた。
「Josette!」
「Ah,Kaho!」
私の姿を見つけるや否や、何度も電話をしたのよ、とジョゼットが駆け寄って来た。
「Je m'etais inquiete pour toi,Kaho (心配していたのよ、華穂)tres……inquiete (とても、心配していたわ)」
と涙目で私を強く抱き締めたジョゼットに、私も両腕を回してしがみつく。
「Desolee,je n'ai rien vu (ごめんなさい、気付かなかったの)」
煌とのおしゃべりに夢中になりすぎて、電話に気付かなかったこと。
そして、気付いて掛け直そうとしたら電池が切れてしまったことも。
説明すると、ジョゼットはようやく表情を緩めて、安堵したように穏やかな口調に戻った。
「D'accord,J'ai compris (分かったわ、もういいから)」
こうして無事だったんだもの、とジョゼットが微笑む。
「Desolee,Josette(ごめんね、ジョゼット)」
どうして、ジョゼットはよそ者の私にここまで優しくしてくれるのだろう。
微笑むジョゼットの涙目は、赤く充血している。
もしかしたら、私は、両親にすらこうして心配してもらった事がなかったのかもしれない。
心配してくれる誰かが、いる。
それがこんなにも幸せな事なのだと、もう一度ジョゼットに抱き締められて思った。
そして、心配させてしまった事を、本当に本当に申し訳なく思った時、ジョゼットの震えた声が私の耳に掛かって、
「……えっ?」
顔を上げた。
また煌がやらかしたんじゃないかって、不安だったのよ、とジョゼットが言ったから。
「……Josetto」
背後で煌の声がして、私とジョゼットはようやく体を離した。