フィレンツェの恋人~L'amore vero~
今さっき、ジョゼットが口にした一言が、耳のずっと奥でリフレインしていた。


また、私の大切な友達を煌が傷つけたんじゃないかと、不安だった、と。


「Kou!」


何時だと思うの、と噛み付くようにジョゼットが煌を睨む。


「J'ai ete imprudente, (軽率だった)vraiment desolee (本当にごめん) ……C'est de ma faute (僕のせいだ)」


心配させて悪かった、と頭を下げた煌を突き放すような態度をジョゼットが返す。


「Ca mennuie! (困るわ)」


華穂は留学生なのよ。


何かあってからでは遅いの、何かあってからでは。


煌、あなたという人がまさかこんな無責任な行動を取るなんて。


私たちはあなたを信頼して、華穂を預けたのに。


こんな遅い時間まで連絡もなしに連れまわすなんて。


「Je suis decu (がっかりしたわ)」


ぺらぺらと、まるで分厚い辞書を適当に流し読みするように早口で言ったジョゼットは、


「Quel dommage (残念に思うわ)、Kou」


あなたがとても繊細で素敵な男性だと思っていたから尚更ね。


と、母親が子供を叱るような厳しい口調に変えて、私の腕を掴んでぶっきらぼうに踵を返した。


なぜ、遅くなったくらいでジョゼットがここまで怒るのか、私には理解できなかった。


そして、煌がひとつも言い返さないのがなぜなのかも。


「Attend! (待って!)differer! (違うのよ)Ecoutez,Josette! (聞いて、ジョゼット)」


私の話を聞いて、と引き止めようとする私をぐいぐい引っ張って、


「Non!」


ジョゼットは聞く耳持たずに行こうとする。


「Il n'est pas mauvais. (彼は何も悪くないの)verite! (本当よ!)he,Josette! (ねえ、ジョゼット!)」


必死に抵抗する私をずるずる引きずりながら、ジョゼットはマシンガンのように言い返して来る。
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