フィレンツェの恋人~L'amore vero~
生まれた国が同じなんだもの。


話に花が咲くのも無理はないわ。


時間を忘れてしまうくらい楽しかった、それだけの事なのにね。


私ったら、どうしてあんなふうに目くじらを立ててしまったのかしら。


どうかしているのは、この私だわ。


と、ジョゼットは言うのだけれど、そんな事はどうでもいい事だった。


日本人で生まれたとか、フランスで育っただとか。


そういう事ははなはだどうでも良かった。


「Desolee」


ジョゼットがすまなそうに謝りながら、私の肩をそっと抱き寄せた。


私も寄り掛かるように、ジョゼットの肩に頭を乗せる。


でも、私は返事をしなかった。


できなかったわけではなくて、わざとしなかったのだ。


ひと言でも声を出してしまったら、こぼれ落ちてしまうのが分かっていたから。


そして、大声をあげて泣いてしまいそうな気がした。


「kaho?」


だから、無理やり笑顔を作って、小さく首を振った。


帰ったら煌に謝りの電話をするわ、とジョゼットは言い、私の手をそっと握って、首を傾げた。


「Qu'est-ce? (これは何?)」


カサ、と音を出した包装紙を指さしながら、ジョゼットが興味深そうに覗き込んで来る。


ああ、これは煌が、と説明しながら包装を開いた次の瞬間、私は言葉を飲み込んだ。


そして同時に、ようやく理解した。


「Vous……les Bleu clair fleurrs……des champs……」


君は。


野原に咲く。


水色の花。


ああ、何て事だろう。


あの時、たくさんディスプレイされていたバレッタの中から、煌が選んでくれたデザインに胸がいっぱいになった。


「joli (素敵ね)」


うっとりとしたジョゼットの吐息が、私の手の中に落ちて来る。


「……Swarovski (これ、スワロフスキーじゃないの)」


煌が選んでくれたのは、スワロフスキー素材のつやつやと光沢のある真っ白な物で、そこに水色のカモミールの花柄がまんべんなく散りばめられた、素敵なバレッタだった。


一日の出来事がスライドショーのように、まぶたの裏で鮮やかによみがえった。
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