フィレンツェの恋人~L'amore vero~
私は、ジョゼットの不思議な色の目を睨むように見つめながら、言った。


「Je veux absolument le revoir」


(彼に……絶対、もう一度、会いたい)


煌に、会いたい。


もう一度、絶対に会って、伝えたいことがある。


私は今日、何度、彼に救われたのだろう。


水色の空のような、煌に。


もしかしたら。


今ならまだ。


間に合うかもしれない。


「停めて!」


まだ、ポン・ヌフに居るかもしれない。


会いたい。


煌に、会えるかもしれない。


「Arretez vous ici,s'il vous plait! (ここで停めて下さい!)」


大きな声を出しながら、運転手のシートに掴みかかった。


運転手がぎょっとした目でルームミラー越しに私をちらりと確認して、ここでかい? 、なんて暢気に笑う。


「そうよ! ここで! 今すぐ!」


でも、タクシーは速度を落とす気配はない。


聞いているのか、この耳はちゃんと機能しているのか、と私は大きな声で怒鳴りながら、最後は運転手の首に掴みかかった。


「Laissez-moi ici,s'il vous plait (ここで降ろして下さい)……Laissez-moi ici! (ここで降ろせ!)」


降ろしなさい! 、と叫びながら運転手の首を掴んで前後に揺すると、車は激しく蛇行したのち、道路の真ん中で急ブレーキ音と共に停車した。


「C'est incroyable! (信じられないよ!)」


青ざめた顔で、運転手が私を振り返り見る。


「Femme sauvage! (なんて野蛮な女だ!)」


野蛮な女で悪かったわね。


「honneur(光栄だわ)」


Merci (ありがとう)、と微笑んだ私をジョゼットが唖然とした顔で見つめてくる。


私はジョゼットににっこり微笑んで、バッグから財布を抜き出して、


「Gardez la monnaie (おつりは結構よ)」


と財布から100ユーロ札を抜き取り、運転手のつるつる頭のてっぺんに叩きつけるように置いた。


財布をバッグに突っ込む私の手を、ジョゼットが掴んだ。


「Kaho?」


あなた、何を考えているのよ、と言いかけたジョゼットに私はしっかり頷いた。


「Excusez-moi,je dois partir (ごめんなさい、行かなくちゃ)」
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