フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「ええ。とっても」
「良かった」
「でも」
と、私が口にした瞬間、
「このバレッタを付ける事はできない」
「……なぜ?」
煌の笑顔がふいっと陰った。
「私はこのバレッタにふさわしい女性ではないもの」
今の私に、このバレッタはあまりにも眩しすぎる。
「私ね、本当はとても孤独を感じていたの。情けないの、本当に」
心配する両親や友人たちの反対を押し切って来たこの語学留学に、本当は自分自信がいちばん不安で自信なんて持っていなかった。
「笑いたくもないくせに、見栄を張って、へらへら笑っていたけど。本当は疲れていたの」
本当は、毎日、頑張って無理して笑っていた。
余裕がある大人を演じて、その陰ではこれっぽっちの余裕の欠片も無かった。
本当はずっと孤独で不安で、寂しくて。
「自信なんてなかった」
私は吐き出すように、続けた。
「これっぽっちもなかった。ただ、要らない見栄を張っていただけなのよ」
本当に情けない女だと思われたかもしれない。
「だから、あんなふうに馬鹿みたいに、泣いてしまったの」
ひったくりに遭った時、子供のように泣きわめいてしまった事を笑われてしまうかもしれない。
そんな事を思い、覚悟していたけれど。
「情けないでしょう? だから、このバレッタはまだ早いの、今の私には」
煌はひとつも馬鹿にしなかったし、それどころか、
「そんな事はないよ」
真剣な眼差しで、真摯に受け止めるように、こくりこくりと頷きながら聞いてくれた。
「でも、このバレッタ、持っていてもいい?」
これ、と水色のカモミール柄のバレッタを見せながら首を傾げてみる。
「目標にする。このバレッタを身に着けても恥ずかしくない女性になりたいの」
強くなりたい。
優しくなりたい。
自分に誠実でありたい、そう、思った。
そして、それは突発的だった。
「あなたのように……」
言葉が喉につっかえて一瞬止まってしまった。
胸が込み上がる感情でいっぱいになって、窒息しそうになる。
「あなたの、ような」
煌の瞳を見ていたら、泣きそうになってしまった。
「……煌のような」
声が震える。
「良かった」
「でも」
と、私が口にした瞬間、
「このバレッタを付ける事はできない」
「……なぜ?」
煌の笑顔がふいっと陰った。
「私はこのバレッタにふさわしい女性ではないもの」
今の私に、このバレッタはあまりにも眩しすぎる。
「私ね、本当はとても孤独を感じていたの。情けないの、本当に」
心配する両親や友人たちの反対を押し切って来たこの語学留学に、本当は自分自信がいちばん不安で自信なんて持っていなかった。
「笑いたくもないくせに、見栄を張って、へらへら笑っていたけど。本当は疲れていたの」
本当は、毎日、頑張って無理して笑っていた。
余裕がある大人を演じて、その陰ではこれっぽっちの余裕の欠片も無かった。
本当はずっと孤独で不安で、寂しくて。
「自信なんてなかった」
私は吐き出すように、続けた。
「これっぽっちもなかった。ただ、要らない見栄を張っていただけなのよ」
本当に情けない女だと思われたかもしれない。
「だから、あんなふうに馬鹿みたいに、泣いてしまったの」
ひったくりに遭った時、子供のように泣きわめいてしまった事を笑われてしまうかもしれない。
そんな事を思い、覚悟していたけれど。
「情けないでしょう? だから、このバレッタはまだ早いの、今の私には」
煌はひとつも馬鹿にしなかったし、それどころか、
「そんな事はないよ」
真剣な眼差しで、真摯に受け止めるように、こくりこくりと頷きながら聞いてくれた。
「でも、このバレッタ、持っていてもいい?」
これ、と水色のカモミール柄のバレッタを見せながら首を傾げてみる。
「目標にする。このバレッタを身に着けても恥ずかしくない女性になりたいの」
強くなりたい。
優しくなりたい。
自分に誠実でありたい、そう、思った。
そして、それは突発的だった。
「あなたのように……」
言葉が喉につっかえて一瞬止まってしまった。
胸が込み上がる感情でいっぱいになって、窒息しそうになる。
「あなたの、ような」
煌の瞳を見ていたら、泣きそうになってしまった。
「……煌のような」
声が震える。