フィレンツェの恋人~L'amore vero~
うん、と頷いたあと煌は少しだけ緩んでいたネクタイをきゅっと締め直し、背筋を伸ばした。
「華穂の背後霊に承諾を得ないと」
「背後霊?」
ぷ、と煌が笑う。
「そう。まずは失った信用を取り戻さないと」
そう言って、煌は私の背後を指さした。
振り向いてみると、背後に呆れ顔のジョゼットが腕組みをしながら立って、私たちを見つめていた。
私を追いかけて来たのだろう。
「ジョ――」
説明しようとした私の腕を捕まえて、煌が私を背中に隠すように前へ飛び出す。
「Josette!」
煌の背中に、月明かりが降り注ぐ。
「J'ai un service a vous demander! (お願いがあるんだ)」
煌の声が、夜のポン・ヌフに響く。
少し長い間があったあと、ジョゼットの声が返って来た。
「Quoi?(何?)」
「Je vous demande pardon (君なら、分かるだろう)」
僕の言いたい事、君なら分かるだろう、ジョゼット。
僕を知っている君なら、と煌が肩をすくめて苦笑いした。
「……trop tard (手遅れなんだ)」
trop tard、と繰り返す煌の表情は真剣そのもので、緊張感が私にも伝わってくるほどだった。
フウ、とジョゼットが吐息を漏らす。
「Kou? Tu en es sur? (本気なの?)」
「Oui」
煌が頷く。
ふたりは口を真一文字に結んで、まるでお互いの腹の中を探り合うように、静かに見つめ合う。
それは長い長い時間だったのかもしれないし、思うより遥かに短い時間だったのかもしれない。
その張りつめた空気に触れてはならない気がして、私はただ、煌の横に突っ立っているしかなかった。
「Oui」
先に白旗を揚げて口を開いたのは、
「Oui,D'accord (もういい、分かったわ)」
ジョゼットだった。
「Perde,(負けたわ) Je donne ma langue au chat! (降参よ)」
呆れたと言わんばかりに苦笑いしたジョゼットが、
「Faites comme vous voulez! (好きなようにして)」
豪快に笑って煌を指さす。
「華穂の背後霊に承諾を得ないと」
「背後霊?」
ぷ、と煌が笑う。
「そう。まずは失った信用を取り戻さないと」
そう言って、煌は私の背後を指さした。
振り向いてみると、背後に呆れ顔のジョゼットが腕組みをしながら立って、私たちを見つめていた。
私を追いかけて来たのだろう。
「ジョ――」
説明しようとした私の腕を捕まえて、煌が私を背中に隠すように前へ飛び出す。
「Josette!」
煌の背中に、月明かりが降り注ぐ。
「J'ai un service a vous demander! (お願いがあるんだ)」
煌の声が、夜のポン・ヌフに響く。
少し長い間があったあと、ジョゼットの声が返って来た。
「Quoi?(何?)」
「Je vous demande pardon (君なら、分かるだろう)」
僕の言いたい事、君なら分かるだろう、ジョゼット。
僕を知っている君なら、と煌が肩をすくめて苦笑いした。
「……trop tard (手遅れなんだ)」
trop tard、と繰り返す煌の表情は真剣そのもので、緊張感が私にも伝わってくるほどだった。
フウ、とジョゼットが吐息を漏らす。
「Kou? Tu en es sur? (本気なの?)」
「Oui」
煌が頷く。
ふたりは口を真一文字に結んで、まるでお互いの腹の中を探り合うように、静かに見つめ合う。
それは長い長い時間だったのかもしれないし、思うより遥かに短い時間だったのかもしれない。
その張りつめた空気に触れてはならない気がして、私はただ、煌の横に突っ立っているしかなかった。
「Oui」
先に白旗を揚げて口を開いたのは、
「Oui,D'accord (もういい、分かったわ)」
ジョゼットだった。
「Perde,(負けたわ) Je donne ma langue au chat! (降参よ)」
呆れたと言わんばかりに苦笑いしたジョゼットが、
「Faites comme vous voulez! (好きなようにして)」
豪快に笑って煌を指さす。