フィレンツェの恋人~L'amore vero~
煌は一体、何人の女性を泣かせて来たのかしら。


あの通り背は高いしスタイルが良いし、顔立ちは綺麗に整っているし、秀才だし、紳士だし、お金持ちなのにそれを鼻に掛けたりしない。


煌はモテるの。


でもね、明らかにおかしいのよ、変人なの。


異性にはまるで興味を示さないのよ。


私やパスカルが、何人の女の子を紹介したかしら。


でも、一度会うと必ず言うの。


もう二度と会いたくないってね。


酷い時なんて、女性をその場に置き去りにして、ひとりでとっとと帰ったりするのよ。


私は煌を同性愛者じゃないかと疑っていた時期があったの。


だって、まるで女性に興味を示さないんだもの。


それどころか、女性を毛嫌いしているようにすら見えたわ。


でも、違ったみたいね。


安心したわ。


「Soulage? (安心した?)」


ええ、そうね。


煌も普通の男だったのね。


初めてよ。


私の知る限りでは、初めてね。


煌が、異性に興味を示したのは。


おそらく、初めてだと思うわ。


「Que le meme (同じだからよ) Je suis japonais (同じ日本人だから)」


そう言ってけらけら笑う私を真剣な目でじっと見つめて、


「Non」


とジョゼットは静かに首を横に振って微笑んだ。


いいえ。


それはおそらく、違うわ。


もし、あなたが日本人でなくても、生粋のフランス人だったとしても。


アメリカ人でも中国人でも、ロシア人だったとしても。


煌はきっと、華穂に興味を示していたと思うもの。


「Pour quelle raison? (なぜ、そう思うの?)」


少し緊張しながら聞くと、


「Euh……(さあ……)」


ジョゼットはぎこちなく陰り気味の翡翠色の視線を泳がせたあと、


「Je ne comprends pas tres bien (それは良く分からないのだけど)」


mais(でも)、と私の手の中のバレッタを見つめて、続けた。


それはきっと、あなただからだと思うわ、華穂。


煌は、他の女性には無い何かを、華穂、あなたの中に見つけたんじゃないのかしら。
 
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