フィレンツェの恋人~L'amore vero~
出逢うべきではなかったの。
私たち。
「N'abandonnez pas si rapidement,Kaho! (簡単に諦めないで)」
ジョゼットに背中を叩かれて、私は弾かれたように顔を上げた。
「Vous avez tort de penser cela (そう考えるのは間違っていると思うわ)」
と、厳しい口調で言いながらも、とても優しく微笑むジョゼットの瞳は、やっぱり不思議な色をしている。
神秘的な、だけど陰りのある、翡翠色。
「mais,Josette……(でもね、ジョゼット)」
言いかけた言葉にふたをするように私の口元を手で塞いで、
「Non,Je ne pense pas ca (私はそうは思わない)」
ジョゼットは本当にゆっくりと、慎重に首を横に振った。
「Le futur est inconnu (未来は分からないのよ)」
誰にもね。
知っているとすれば、それは神様くらいだわ。
と、ジョゼットは眉をハの字にして笑った。
「Ne renonce pas (諦めないで)」
返事もせずに涙ぐんでしまった私に、ジョゼットは不器用な微笑み方をして、
「Le rentre (帰りましょう)」
包み込むように、そーっと、私の肩を抱き寄せた。
諦めるなと言ったジョゼットに、私は結局、頷くことも首を振ることもできなかった。
だって、諦めるも何も、それ以前の問題ではないだろうか。
煌と過ごした夏は、実際は存在しない幻のような、奇跡のような時間で。
パリという雅やかな街の魔法に魅せられた、白昼夢のような時間だったのではないかと。
そう思わずにはいられない、美しく煌めく秋の夕焼け空が、まるまると街を飲み込んでいった。
ところが、急展開を迎えたのはまさにその日のその数時間後で、私の想いは一気に爆発してしまった。
公園をあとにした私たちは、スーパーでどっさりの食材を買い込んだ。
私が落ち込んでいると、決まって母が作ってくれたのよ。
元気になれるご飯なの。
きっと、華穂も元気になれるわ。
そう言って、ジョゼットが夕飯に、プロヴァンスの郷土料理を作ってくれることになった。
18時になると外はすっかり暗くなって、リビングにはにんにくとスパイスのこうばしい香りが充満していた。
私たち。
「N'abandonnez pas si rapidement,Kaho! (簡単に諦めないで)」
ジョゼットに背中を叩かれて、私は弾かれたように顔を上げた。
「Vous avez tort de penser cela (そう考えるのは間違っていると思うわ)」
と、厳しい口調で言いながらも、とても優しく微笑むジョゼットの瞳は、やっぱり不思議な色をしている。
神秘的な、だけど陰りのある、翡翠色。
「mais,Josette……(でもね、ジョゼット)」
言いかけた言葉にふたをするように私の口元を手で塞いで、
「Non,Je ne pense pas ca (私はそうは思わない)」
ジョゼットは本当にゆっくりと、慎重に首を横に振った。
「Le futur est inconnu (未来は分からないのよ)」
誰にもね。
知っているとすれば、それは神様くらいだわ。
と、ジョゼットは眉をハの字にして笑った。
「Ne renonce pas (諦めないで)」
返事もせずに涙ぐんでしまった私に、ジョゼットは不器用な微笑み方をして、
「Le rentre (帰りましょう)」
包み込むように、そーっと、私の肩を抱き寄せた。
諦めるなと言ったジョゼットに、私は結局、頷くことも首を振ることもできなかった。
だって、諦めるも何も、それ以前の問題ではないだろうか。
煌と過ごした夏は、実際は存在しない幻のような、奇跡のような時間で。
パリという雅やかな街の魔法に魅せられた、白昼夢のような時間だったのではないかと。
そう思わずにはいられない、美しく煌めく秋の夕焼け空が、まるまると街を飲み込んでいった。
ところが、急展開を迎えたのはまさにその日のその数時間後で、私の想いは一気に爆発してしまった。
公園をあとにした私たちは、スーパーでどっさりの食材を買い込んだ。
私が落ち込んでいると、決まって母が作ってくれたのよ。
元気になれるご飯なの。
きっと、華穂も元気になれるわ。
そう言って、ジョゼットが夕飯に、プロヴァンスの郷土料理を作ってくれることになった。
18時になると外はすっかり暗くなって、リビングにはにんにくとスパイスのこうばしい香りが充満していた。