フィレンツェの恋人~L'amore vero~
その香りに吸い寄せられるようにキッチンへ向かうと、私の気配に気づいたジョゼットが振り向いた。
「Kaho. Quest-ce qu'ill y a? (どうしたの?)」
もうしばらくかかるからリビングでくつろいでいて、とジョゼットは私を追い払うジェスチャーをする。
「Ca sent bon! (いい香りね) Je peux t'aider? (手伝おうか?)」
とキッチンへ入ろうとするなれば、
「Non merci! Ne vous inquietez pas! (ご心配なく!)」
ぴしゃりと立ち入り禁止令を出される。
「Je m'ennuie! (たいくつなの!)」
むくれっ面で返した私に、ジョゼットは涼やかな顔でお鍋をぐるぐるかき混ぜながら、しっしと追い払うジェスチャーをした。
「Kaho」
あなた料理できないじゃないの、と呆れ気味に言いながら。
「C'est sur! (確かに) Vous avez raison (おっしゃる通り)」
向こうでテレビを観るわ、と言い残し私はリビングに戻ることにした。
「たいくつ……」
ソファーにダイブするように沈んで、だらだらと寝そべる。
「この時間て面白い番組やってないのよねえ……」
なんてぶつぶつ言いながらリモコンにぬうーっと手を伸ばした時、来客を知らせるブザーが鳴った。
ハッとして、体を起こす。
「Kaho!」
今、手が離せないの、キッチンからジョゼットの声が飛んで来た。
「Reponds,S'il te plait! (出てくれない?)」
「Oui,d'accord! (分かった)」
ソファーを立って壁時計を確認した時、針は18時30分になろうとしていた。
誰だろう。
この夕飯時に。
非常識ね、と少しむっとしながら玄関に向かい、
「C'est de la part de qui? (どちら様ですか?)」
とつっけんどんに訊きながらドアをガサツに押し開けた。
ゴン、という鈍い音がして、
「ぐわっ!」
とカエルが潰れたような声を絞り出してそこにしゃがみ込んだのは、約1か月振りに見る人物だった。
真っ黒な髪の毛。
甘くて、スパイシーな香り。
広い肩幅と、しわひとつない光沢感たっぷりのスーツに、水色のネクタイ。
「こ……煌!」
「Kaho. Quest-ce qu'ill y a? (どうしたの?)」
もうしばらくかかるからリビングでくつろいでいて、とジョゼットは私を追い払うジェスチャーをする。
「Ca sent bon! (いい香りね) Je peux t'aider? (手伝おうか?)」
とキッチンへ入ろうとするなれば、
「Non merci! Ne vous inquietez pas! (ご心配なく!)」
ぴしゃりと立ち入り禁止令を出される。
「Je m'ennuie! (たいくつなの!)」
むくれっ面で返した私に、ジョゼットは涼やかな顔でお鍋をぐるぐるかき混ぜながら、しっしと追い払うジェスチャーをした。
「Kaho」
あなた料理できないじゃないの、と呆れ気味に言いながら。
「C'est sur! (確かに) Vous avez raison (おっしゃる通り)」
向こうでテレビを観るわ、と言い残し私はリビングに戻ることにした。
「たいくつ……」
ソファーにダイブするように沈んで、だらだらと寝そべる。
「この時間て面白い番組やってないのよねえ……」
なんてぶつぶつ言いながらリモコンにぬうーっと手を伸ばした時、来客を知らせるブザーが鳴った。
ハッとして、体を起こす。
「Kaho!」
今、手が離せないの、キッチンからジョゼットの声が飛んで来た。
「Reponds,S'il te plait! (出てくれない?)」
「Oui,d'accord! (分かった)」
ソファーを立って壁時計を確認した時、針は18時30分になろうとしていた。
誰だろう。
この夕飯時に。
非常識ね、と少しむっとしながら玄関に向かい、
「C'est de la part de qui? (どちら様ですか?)」
とつっけんどんに訊きながらドアをガサツに押し開けた。
ゴン、という鈍い音がして、
「ぐわっ!」
とカエルが潰れたような声を絞り出してそこにしゃがみ込んだのは、約1か月振りに見る人物だった。
真っ黒な髪の毛。
甘くて、スパイシーな香り。
広い肩幅と、しわひとつない光沢感たっぷりのスーツに、水色のネクタイ。
「こ……煌!」