フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「Autant que je sache? Quest-ce que ca vent dire? (どういうことなの?)」


今度は私が詰め寄ると、


「Euh……(ええと)」


ジョゼットは困った顔をしてふわふわの髪の毛に細い指を滑り込ませ、くしゃりと握り梳いた。


その仕草は、何か隠し事をしている時のジョゼットの癖だ。


「Josette!」


「Euh……en fait (実はね)」


そして、ジョゼットは隠し事がへたくそだった。


「interdisant de parler (口止めされていたの)……Pascal (パスカルに)」


「Quoi (何を?)」


「Psst……(あのね)」


ジョゼットは腹を決めたのか、今まで隠していた分吐き出すように、一気にべらべらと白状し始めた。


「……Si, (だからね) Pas un hasard (たまたまじゃないの) Ce n'est pas un hasard (偶然なんかじゃないのよ)」


「Pas……un……hasard……」


たまらなかった。


私は無意識のうちにブラウスの胸元部分をむしるように掴んでいた。


「Oui」


とジョゼットは微笑んでくれているのに、私には微笑み返す事ができなかった。


ジョゼットの言った事が、もし、本当であるのならば。


それが真実であるとしたら……。


私にとそれは、もしかしたら、一大事なのかもしれないのだから。


「煌……」


と呟いた私に、ジョゼットは言った。


「Le hasard (必然)」


どくり、どくり、どくり。


急に脈が速度を上げる。


そうしている間に、煌は遠ざかって行く。


「Tu comprends? (分かる?) Tu vois ce que je veux dire? (私の言った事が分かる?)」


聞いていたのか、とジョゼットは急かすように言いながら、茫然と突っ立ってばかりの私の体を前後に揺すった。


次はいつ会えるか分からないのよ!


と、言いながら。


聞いていたわ。


聞いていた。


でも、もしかしたら、私は半分聞いて半分は上の空だったのかもしれない。


途中から、ジョゼットの言う事が理解できなくなった。


煌で、頭がいっぱいになって、どうにもならなかった。
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