フィレンツェの恋人~L'amore vero~
煌は長い指を私の髪の毛の中に滑り込ませ、


「華穂」


胸に私を抱き寄せた。


スーツの上からでも、生々しいほどに煌の鼓動が頬に触れる。


「煌……」


「うん」


「あなたは、私の煌めきよ」


初めて会ったあの瞬間から、ずっと。


キラキラ、キラキラ。


光り輝いて、眩しくて。


「初めて会った日からずっと、あなたは私の煌めきなのよ。眩しい、とても」


「……華穂」


突然、


「本当にごめん」


と謝った煌は、少しだけ乱暴な手つきで私の前髪を掻き上げ、額に唇を押し当ててきた。


「……え……」


そして、その部分に蓋をするように今度は額をコツンと当てて、煌は小さな溜息を吐き出した。


信じられないよ、そう、囁きながら。


「まさか、自分がこんな節操のない人間だったなんて」


額を離して、煌が私に落とした視線は、この世のものとは思えないほどの優しいものだった。


「やっぱり、僕は鷹司一郎の息子なんだ」


けれど、その瞳には妙な色気も含まれていて、私の心臓は爆発しそうなほど、のたうちまわるように暴れ回る。


「今、どんなに汚い手を使ってでもいいから、君を僕のものにしたいと……思ってしまった」


ごめん。


もう一度謝って、煌は私の耳元に唇を寄せ、かすれたほろ甘い声でこう、言った。


「君が、好きだ」


そして、そのまま頬にキスをして、唇を離して、今度は呪文のように囁いた。


「Je t'aime」


くらくらする。


私は、彼のフランス語を噛み締めるように、静かに目を閉じた。


全身に、電流が走った。


煌の声は魔法のように私の細胞をついばむように、蝕んだ。


「Je t'aime……Kaho」


私は煌が放つ優しく煌めく光に感電し、その声が甘い毒となり私の体に染み込んだ。


「君は? 華穂」


私はゆっくりと目を開けて、口角を上げて微笑んでみせた。
< 331 / 415 >

この作品をシェア

pagetop