フィレンツェの恋人~L'amore vero~
体を重ねる、とか、抱き合う、だとか。


そういう“綺麗”な表現とは遥かほど遠い。


私たちは野生動物の本能のままに行われるその行為のように。


いいえ。


もっともっと、節操のない。


お互いの全てをむさぼり、食べ尽くすように。


激しく、乱暴に、求め合った。


人様には言えないような、酷いものだった。


「……煌」


私は意識が朦朧としていく中、必死に煌の背中に両手を回してしがみついた。


そうでもしないと、繰り返し寄せてくる甘ったるい波に呑み込まれてしまいそうで、怖かった。


呑み込まれないように声を漏らす私の口元を片手で塞いで、


「君は、僕だけのものだ」


眉根を寄せた苦しげな表情の煌が、途切れ途切れに囁く。


もう。


このまま呼吸が止まってしまって構わない。


終始、彼の息づかいは、まるで激しい怒りを示すように粗暴で猛々しかった。


その息づかいとは対極に、私の肌を這うその指使いと扱いは切なくなるほどうやうやしく、慎重になっていった。


「……煌」


その対極的な差異の狭間にもどかしくて、歯がゆくて、じれったくて。


私の体は焦燥感でいっぱいになり、ひとしお、彼を求めた。


「お願いだから……」


乱雑に扱って欲しい。


「優しく、しないで」


いっそ、壊して欲しい。


粉々に砕いて、がさつに扱って欲しかった。


その繊細な指で、私を世界一ひどい目に遭わせて欲しいとさえ思った。


もう、二度と元には戻れないほど、


「大切に扱わないで」


滅茶苦茶に扱って欲しくて、どうしようもなかった。


それくらい、私は、煌の全てを受け止めたかったのだ。


過去も、今抱えていることも、何もかも全てを受け止めて、いっそ、煌の体に溶け込んで彼になってしまいたい。


全てを、私に吐き出して欲しくて、頭がおかしくなりそうだった。
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