フィレンツェの恋人~L'amore vero~
月明かりが差し込んでいるだけの、ぼんやりと霞む仄明るい空間。


軋む、ベッドの音。


甘ったるい吐息が混ざり合い、やがてひとつになった時。


私は、体を弓なりに仰け反らせながら、その優しく悲しい色の“煌めき”に、溺れた。













勢いだろう。


と、そう言われてしまえば、確かにそうなのかも分からない。


けれど、例えもしそうであったとしても、後悔などこれっぽっちもなかった。


むしろ、この勢いがなければ、私たちに変化などなかった。


昔気質のようなきちんとした段階があって、それを一段ずつ踏んでから行為に辿り着くより良かったとさえ思う。


今までこうならなかった事の方が不思議なくらいだったのではないか、とも。


やわらかくけぶるような月明かりが、部屋を照らす。


決して長いとは言い難いけれど、その月明かりを吸収して光沢を放つまつ毛。


綺麗。


シャープなラインの頬と、すっと通った鼻筋と。


煌の横顔は彫刻のように美しかった。


隣に横たわり、乱れきった呼吸を整える煌の横顔を見つめていると、窒息してしまいそうなほどの愛しさが横隔膜の更に底から突き上げた。


横たわる彼はまるで、ひだまりに包み込まれて昼寝をする自由気ままな黒猫のようだった。


「……煌?」


煌の腕枕に頭を乗せたまま質問すると、


「今まで、何人の女性と交際したの?」


「君は残酷で恐ろしい女性だね」


煌はクククと困り果てたように笑った直後、フウと小さく息を吐き出した。


「愛し合った直後に聞くかな、普通」


「だって……」


やっぱり、気になるんだもの。


こんなにも素敵な煌が、これまで交際してきた女性たちはどれくらい素敵だったんだろう、って。


「多くはないし、少なくもない。俗に言う、平均的なところだと思うけど。でも、どれも交際したうちに入るかどうか……交際したと言えるのかどうかも……」


ぶつぶつ、呪文を唱えるように言いながら、煌は目を閉じたまま苦笑いを浮かべる。
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