フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「なんだよ。教えてくれてもいいじゃないか」


拗ねたように、でもはにかみながら天井を見上げる煌の横顔に、思わず見惚れた。


「僕たち、もう、恋人だろ?」


こんな事を思うなんて、私は変なのかもしれないけれど。


大人の男の人に使う言葉ではないのかもしれないけれど。


本当に、綺麗。


私のしつこい視線に気付いた煌が「どうかした?」と微笑みながら私の前髪を掬うように掻き上げて、私は「いいえ」と首を振りながら微笑み返した。


煌は元々、整い過ぎているほどの顔立ちなのだ。


けれど、こうして月明かりの中で見ると、昼間とはまるで違った美しさがあった。


くらくら眩暈を起こしてしまいそうな、妙な男の色気があった。


「ねえ、煌」


私はおもむろに手を伸ばし、少々緊張しながら、微かに震える小指の先で煌のまつ毛を弾いた。


「わ……何だよ」


くすぐったそうに、煌が瞬きを繰り返す。


例えば。


この妖艶で神秘的な、切れ長の目や。


ひと筋の光のように通った鼻筋とか。


薄くて、でも、形のいい唇だとか。


「……その子は……あなたと似ているの?」


煌の唇から「……え」と声が漏れ出した。


切れ長の目がぎょろりと見開かれ、瞳が黒光りした。


「……その、子?」


煌の瞳が私を呑み込もうとするように黒々と光る。


「あ、ほら……フィレンツェにいる……あなたの弟」


「あ……ああ……」


何かを言おうとして、でも唇を結んだ煌の表情は一変して、小難しい表情になった。


そして、私から目を反らすように天井に視線を流して、煌は言った。
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