フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「そ……そう、かな?」


「そうよそうよ! パスカルがおかしいんだわ! だって、こんなに綺麗なのに!」


「あまり見ないで。そんなふうに見られると照れくさくなるだろ」


「でもでも、だってだって」


しつこい私を、


「もう黙れ」


煌が後ろから抱きすくめて、毛布の中に潜り込んだ。


背中に煌の肌と温度が触れて、


「うわ……華穂、ちゃんと食べてるの?」


低い声が耳元から首筋を撫でるように触れる。


「今にも折れそうで怖くなる」


そう言いながら、煌は包み込むようにそーっと、本当にそおーっと、私を抱きすくめた。


「簡単に折れないわよ。私、不死身なのよ」


くすくす笑いながら、鎖骨のあたりで煌の腕を抱きしめた。


煌はとても温かくて、まるで陽だまりを背負っているようで、少しだけくすぐったかった。


「ねえ、煌」


「うん」


「あなた自身はどうなの? 自分の瞳を怖いとか気味が悪いと思う事、ある?」


うーん、と煌が私の肩に顎を乗せた。


「確かにね。僕も納得した」


「え?」


「あいつと……あ、弟と初めて会った時、正直、ぞっとしたよ。パスカルの気持ちが少し、分かった」


自分とそっくりな瞳を見て、恐ろしくなった。


そう言って、煌は抱き枕にしがみつく子供のように、私の体を強く抱きすくめてきた。


「煌?」


私は煌の中の何かを受け止めるように、背中で感じ取った。


「おそらく……僕は恐れているんだよ。弟の存在を」


「怖いの?」


「怖いんだ、きっと」


先日、妙な噂が煌の耳に入ったのだそうだ。
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