フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「何?」


なぜだか、私も小声で返してしまった。


すると、ミチルはにいーっと含み笑いを浮かべて、私に顔を近づけるようにテーブルに半身を乗り出した。


「いいこと。教えてあげる」


「いいこと?」


と私もテーブルに身を乗り出すと「絶対にひみつよ」とミチルは私の耳に小声で話し始めた。


「あのね」


「うん」


コウは、絶対に、ミチルをお部屋に入れたがらないの。


それはどうしてなのかなあーって、いつも思っていたの。


だから、お留守番の時、冒険することにしたんだけどね。


今日、やっとわかった。


コウがミチルをお部屋に入れたがらない、りゆう。


「コウは、宝物をお部屋にかくしていたのよ」


「えっ、宝物?」


「しっ! 大きな声出さないで」


「ごめん……で。宝物って何だったの?」


「あのね」


ミチルの言う“宝物”を知った瞬間、心臓が止まるかと思った。


「コウの机のいちばん下の引き出しにはね、けんじゅうがあるのよ」


本気で、心臓が止まるかもしれないって。


「……ミ……チル……」


「かほ?」


私は震える手で、ミチルの手首を掴んでいた。


「その、拳銃……どうしたの?」


心臓がバクバク飛び跳ねて、口から飛び出してしまいそうになる。


「どうって。そのままだよ。コウの物を勝手に持ち出したりしたら、さすがに優しいコウでも怒ると思うもの」


「あ……そう、よね」


「あ、かほ。怖いんでしょう」


「え?」


「手が震えてる。それに、こわーい顔」


私の顔を指さして無邪気にケラケラ笑うミチルにハッと我に返り、


「嫌だ。驚いただけよ」


私はほっと胸を撫で下ろした。


手のひらにどっさりの汗を握っていた。
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