フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「コウを幸せにしてあげてね」
言った直後のほんの一瞬にミチルが見せたその表情は、この世の酸いも甘いも知り尽くしたような真剣なもので。
このミチルという少女の人格が本当は少女ではなく、煌の母ではないかと疑いたくなるほどだった。
「ええ、もちろん」
頷きながら私は背筋を正して、椅子に深く座り直した。
緊張した。
私を見つめるその瞳の美しさはこの世のものとは思えないくらいで、身震いした。
水色というより、まるで、トルコ石のような色。
「よかった」
大切なぬいぐるみを抱きしめるように膝を抱きしめて、甘えるようにくふくふとミチルが笑っている。
確かに、笑っているのに。
とてもじゃないけれど、私には笑っているようには見えなかった。
寂しそうで、悲しそうで、切なさに必死に耐えているようで。
「あのね、かほ」
先に目を反らしたのは、ミチルの方だった。
「ミチルね……もうすぐいなくなると思う」
そう言って、ミチルは膝小僧に乗せていた顎を引いて、顔を膝に埋めた。
「居なくなるって……どういうこと?」
膝に顔を埋めたまま、ミチルは言った。
ミチルのお仕事、終わったの。
今日でおしまい。
さがしものが見つかったから。
やっと見つけたの。
やっと見つかったの。
「だから、お願い。かほ」
その声は妙に苦しそうで。
「コウを幸せにしてあげてね」
たった今、地の底から立ち上がったようなくぐもった声だった。
うずくまるように膝を抱きしめたまま顔を上げないミチルに、どんな言葉を掛けてあげたらいいのか、分からなかった。
もしかしたら、ミチルは泣いているのかもしれない。
そう思うと、安易に軽々しく言葉を掛けてはいけないような気がして、声を掛ける事ができなかった。
言った直後のほんの一瞬にミチルが見せたその表情は、この世の酸いも甘いも知り尽くしたような真剣なもので。
このミチルという少女の人格が本当は少女ではなく、煌の母ではないかと疑いたくなるほどだった。
「ええ、もちろん」
頷きながら私は背筋を正して、椅子に深く座り直した。
緊張した。
私を見つめるその瞳の美しさはこの世のものとは思えないくらいで、身震いした。
水色というより、まるで、トルコ石のような色。
「よかった」
大切なぬいぐるみを抱きしめるように膝を抱きしめて、甘えるようにくふくふとミチルが笑っている。
確かに、笑っているのに。
とてもじゃないけれど、私には笑っているようには見えなかった。
寂しそうで、悲しそうで、切なさに必死に耐えているようで。
「あのね、かほ」
先に目を反らしたのは、ミチルの方だった。
「ミチルね……もうすぐいなくなると思う」
そう言って、ミチルは膝小僧に乗せていた顎を引いて、顔を膝に埋めた。
「居なくなるって……どういうこと?」
膝に顔を埋めたまま、ミチルは言った。
ミチルのお仕事、終わったの。
今日でおしまい。
さがしものが見つかったから。
やっと見つけたの。
やっと見つかったの。
「だから、お願い。かほ」
その声は妙に苦しそうで。
「コウを幸せにしてあげてね」
たった今、地の底から立ち上がったようなくぐもった声だった。
うずくまるように膝を抱きしめたまま顔を上げないミチルに、どんな言葉を掛けてあげたらいいのか、分からなかった。
もしかしたら、ミチルは泣いているのかもしれない。
そう思うと、安易に軽々しく言葉を掛けてはいけないような気がして、声を掛ける事ができなかった。