フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「眩しいじゃない」


こんなにも眩しくて、失明でもしてしまいそうなのに。


「眩しいわよ」


あなたが。


煌。


「眩しくて目が痛い。あー、痛い痛い。眩しい」


くくくくく、と笑いながら煌の左腕に抱きつくと、


「酔っぱらったんじゃないのか」


華穂にアルコールは早すぎたかな、と少し困った顔で煌も笑った。


あの日、ジョゼットにすごく怒られたよね、とか。


あの時のジョゼットの怒り方すごかったね、だとか。


話の盛り上がりが頂に達した頃、煌の携帯電話に着信があって、それはパスカルからだった。


それはノートルダム大聖堂の深夜ミサに一緒に行かないかという誘いの電話だった。


クリスマス・イヴがクリスマスに変わる瞬間。


午前0時。


大鐘「エマニュエル」が鳴り響くミサ。


「ノートルダムは参拝者でごった返しているよ。ミサ自体を見れるかどうか……本当にすごい人なんだ」


煌はどうも乗り気ではない様子だった。


でも、フランスでクリスマスを過ごす事が初めての私は全てが新鮮に思えて、


「それでも行きたい。こんなチャンスないもの。一度、行ってみたかったの、ミサ」


ふたつ返事で飛び付いた。


エマニュエルの鐘の音が鳴らされる頃に間に合うように行こう。


とパスカルが車で迎えに来てくれる事になった。


話し終えたあと携帯電話をテーブルに置いて、


「ミサまでまだ3時間もあるな」


煌はソファーに寝転がり、私の膝の上に頭を乗せた。


「時間まで、少し眠ってもいいかな」


「ええ」


私は頷き、煌の髪の毛に触れながら聞いた。


「何時に起こしたらいい?」


「うん……23時頃」


と煌がくすぐったそうに小さく微笑んだ。
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