フィレンツェの恋人~L'amore vero~
「煌ったら……今、私ね」
「ああ、ごめん。今ちょっと手が離せないんだ」
振り向こうともせず、煌は焦りをたっぷり含んだ口調で言った。
「悪いけど、後にして。リビングで待っていて。本当にごめん」
「でも」
あのね、と続けようとした時、
「今、ミチ……あ……煌のお母――」
「やられた!」
再起動したパソコンを見つめる煌の声でかき消されてしまった。
「……オリオン……九条だ……」
デスクの上で稼働音を漏らすパソコンを見つめ、煌は拳でデスクを叩いた。
そして「くっ」と声を漏らし、
「セキュリティーが甘かったんだ……だから、あれほど言ったのに」
崩れるように、ぶっきらぼうに椅子に座った。
「よくパスワードが分かったな……アカウントも全てやられてる」
デスクスタンドに明りを灯し、重たい息を吐き出しながら椅子にどさりともたれた煌の後姿越しに見えたパソコンの画面に目を奪われた。
黒い画面いっぱいを埋め尽くしていたのは蛍光色の鮮やかな緑色の、無数の星だった。
その画面が何を意味しているのか聞こうと思った矢先、
「こんな事ができるのは、あいつだけだろうな」
聞く前に煌が言った。
「ハッキングだよ」
ああ、と両手で頭を抱えた煌がふと何かの存在に気付いた様子で「あれっ」とパソコンの横に手を伸ばし、一枚の紙を手にしたあと、様子が豹変した。
「……何だ……これ」
デスクスタンドの明りに紙を照らし、煌は椅子から飛び下り、デスクの一番下の引き出しに手を掛けた。
「嘘だろ……何で……」
そして、意を決したように一気に引き開け、空き巣に入った泥棒のように乱暴な手つきで中を引っ掻き回した。
「ああ、ごめん。今ちょっと手が離せないんだ」
振り向こうともせず、煌は焦りをたっぷり含んだ口調で言った。
「悪いけど、後にして。リビングで待っていて。本当にごめん」
「でも」
あのね、と続けようとした時、
「今、ミチ……あ……煌のお母――」
「やられた!」
再起動したパソコンを見つめる煌の声でかき消されてしまった。
「……オリオン……九条だ……」
デスクの上で稼働音を漏らすパソコンを見つめ、煌は拳でデスクを叩いた。
そして「くっ」と声を漏らし、
「セキュリティーが甘かったんだ……だから、あれほど言ったのに」
崩れるように、ぶっきらぼうに椅子に座った。
「よくパスワードが分かったな……アカウントも全てやられてる」
デスクスタンドに明りを灯し、重たい息を吐き出しながら椅子にどさりともたれた煌の後姿越しに見えたパソコンの画面に目を奪われた。
黒い画面いっぱいを埋め尽くしていたのは蛍光色の鮮やかな緑色の、無数の星だった。
その画面が何を意味しているのか聞こうと思った矢先、
「こんな事ができるのは、あいつだけだろうな」
聞く前に煌が言った。
「ハッキングだよ」
ああ、と両手で頭を抱えた煌がふと何かの存在に気付いた様子で「あれっ」とパソコンの横に手を伸ばし、一枚の紙を手にしたあと、様子が豹変した。
「……何だ……これ」
デスクスタンドの明りに紙を照らし、煌は椅子から飛び下り、デスクの一番下の引き出しに手を掛けた。
「嘘だろ……何で……」
そして、意を決したように一気に引き開け、空き巣に入った泥棒のように乱暴な手つきで中を引っ掻き回した。