フィレンツェの恋人~L'amore vero~
Il n'y a pas de quoi.
たいしたことじゃないよ。
Ne vous inquietez pas.
心配しないで。
Ce n'est rian.
大丈夫だよ。
「僕なら大丈夫だよ」
どこが大丈夫だと言うのだろうか。
そんな顔をして。
一体、何を言っているのか。
そんな……ありとあらゆる悲しみをかき集めたような目をして。
雪に打たれる煌の姿を見ていると、胸が張り裂けそうになった。
頭の中で、初めて会ったあの日の教会での出来事がありありと蘇った。
同時に耳の奥で、その時の生き生きとした煌の声も、息を吹き返した。
――僕はお金も名誉も地位も要らない
――だけど、譲れない夢があってね
――その夢を叶えるにはそれなりの学力も経済力も必要だと思うから、勉強しているだけで
――いつか
――大人になった弟に、会わせてあげたいんだ
――母さんを、弟に会わせてあげたい
――それが僕の譲れない夢
もう、限界だった。
おそらく、私の方がパスカルより先だったのだと思う。
もう、見ていられなかった。
亡骸を抱きかかえながらなんとかやっとの思いで息をしている煌のその表情は、本当に酷いものだった。
あからさまに目を反らしうつむく他に、どんな方法があったというのだろう。
痛々しくて、不条理で、見るに堪えがたくて。
“そういう”表情をする人間を見たのは初めてで。
胸が潰れてしまいそうだった。
「……煌っ」
想像を超えて、泣けばいいのか叫べばいいのか。
それとも気を失えばいいのか、分からない。
苦痛に歯を食いしばりのた打ち回っているかのような、見ているこっちが悲鳴を上げたくなるような。
そういう表情だった。
たいしたことじゃないよ。
Ne vous inquietez pas.
心配しないで。
Ce n'est rian.
大丈夫だよ。
「僕なら大丈夫だよ」
どこが大丈夫だと言うのだろうか。
そんな顔をして。
一体、何を言っているのか。
そんな……ありとあらゆる悲しみをかき集めたような目をして。
雪に打たれる煌の姿を見ていると、胸が張り裂けそうになった。
頭の中で、初めて会ったあの日の教会での出来事がありありと蘇った。
同時に耳の奥で、その時の生き生きとした煌の声も、息を吹き返した。
――僕はお金も名誉も地位も要らない
――だけど、譲れない夢があってね
――その夢を叶えるにはそれなりの学力も経済力も必要だと思うから、勉強しているだけで
――いつか
――大人になった弟に、会わせてあげたいんだ
――母さんを、弟に会わせてあげたい
――それが僕の譲れない夢
もう、限界だった。
おそらく、私の方がパスカルより先だったのだと思う。
もう、見ていられなかった。
亡骸を抱きかかえながらなんとかやっとの思いで息をしている煌のその表情は、本当に酷いものだった。
あからさまに目を反らしうつむく他に、どんな方法があったというのだろう。
痛々しくて、不条理で、見るに堪えがたくて。
“そういう”表情をする人間を見たのは初めてで。
胸が潰れてしまいそうだった。
「……煌っ」
想像を超えて、泣けばいいのか叫べばいいのか。
それとも気を失えばいいのか、分からない。
苦痛に歯を食いしばりのた打ち回っているかのような、見ているこっちが悲鳴を上げたくなるような。
そういう表情だった。